SSブログ

ノーカントリー [映画【な行】]

 328975view001.jpg

本年度アカデミー賞4部門受賞作品(作品賞・監督賞・助演男優賞・脚色賞)                                                                                                                                                                       ー大阪・試写会にてー

1980年代のテキサス。荒涼とした風景。主な登場人物は3人の男。

328975view010.jpg                                                                                                  モス(ジョシュ・ブローリン)は狩りの途中、偶然何台も止まっているトラックを見つける。                                                                                                                                                                                                        近づいてみると銃で撃たれた死体が何体も転がり、トラックの荷台には大量のヘロインと200万ドルの大金が入ったトランクが。犯罪絡みのトランクに手をつけた時、彼の人生が大きく変わる。

328975view002.jpg                                                                                                                 消えた大金を取り戻す為に雇われた男シガー(ハビエル・バルデム=アカデミー助演男優賞)。酸素ボンベを持ち歩く風変わりな殺し屋。逃げても逃げても振り返るとそこにいる死神のような男。

328975view005.jpg                                                                                                         街の保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)。同僚の保安官が殺されたり、トラックの銃撃事件を調べるうちに住民のモスが事件に巻き込まれていることを察知してモスを追う。登場人物で詳しい素性がわかるのは保安官のベルだけ。                                                                                                                             ベルは保安官の家系に生まれたこと、最近起こる犯罪が理解できないこと、彼の真面目で実直な性格が伝わるナレーションで映画は始まり、ラストも彼の言葉で終わる。事件に絡むかと思えば絡まないし、ラストでますますこの映画を難解にさせる男。

モスはベトナムで特殊部隊にいたらしく、追ってくるシガーに怪我をさせられながらもうまくかわしながら逃げていく。可愛い奥さんがいて事件後は実家に帰すがシガーにそのことはばれて脅されている。彼とは戦うしかないのだ。逃げては隠れ、追い詰められ、(途中何回も「そのトランクを捨てれば?命が惜しくないの?」と問いかけるてしまう自分がいるのだが)大金をくすねるチャンスを手放さない。

シガーは不気味で怖い男。酸素ボンベのホースから出る圧縮酸素を頭に一気に吹きつけ感情もなく簡単に人を殺し、部屋の鍵穴も空気で吹っ飛ばし証拠も残さない。無口な殺人鬼かと思えばいろんな質問もしてくる。しかし彼との会話は一方通行で会話がまったく成り立っていないというか、彼の法則意外は受け付けないのでこんな人とは長く喋ってはいけないと危険を感じる会話。しかも彼と世間話をした人は長くは生きていられないのだ。彼が望んだ時に行う、望まないコインの賭けに勝たない限りは。                                                                                                                                                 怪我は自分で治療してしまうブラックジャックのような一面もある。彼もベトナムで戦った男なのかも。

328975view003.jpg                                                                          ・好き嫌いが分かれる映画だと思います。あんな前半じっくり描かれていた死の追いかけっこも後半にあっけなく終わってしまうし・・・と言うことは重要なのはそこではないということ。全てはラストで語られるベルの言葉のために演じられているのか。 

                                                                                                                                                                                                                                                    しかし、なんといってもハビエル・バルデムの薄気味悪さは圧巻。大きな音響が絶妙なバランス。追いかけられる恐怖、乾いた風景、緊張感、嫌な圧迫感。これは映画館でじっくり観なければもったいない映画です。

 

今回は試写会で観ましたが、帰りにおまけ付のこの映画の「前売り券」の販売が行われていました。今見た映画の前売り券を買う人はまったくいませんでしたが、試写会が終わって丸一日経ってもラストの意味を考えてる自分がいて、やっぱりあの前売り券は買いだったのね。と思ってます。他の映画にありがちな“原作を読んで埋めたい、わかりたい”というのではなく、もう一度初めから映画を観直さなきゃ、と思わせる映画でした。

 

原題『NO COUNTRY FOR OLD MEN』 「血と暴力の国」    ★★★★☆

  


nice!(7)  コメント(12)  トラックバック(2) 
共通テーマ:映画

nice! 7

コメント 12

キキ

DSilberlingさん、niceありがとうございます。
by キキ (2008-03-10 22:24) 

Betty

アカデミー賞で話題のこの作品。
興味はあるのですが・・「怖い。。。怖いです!!!」
あの不気味なシガーの雰囲気。悪夢で唸らされそうです;;
by Betty (2008-03-11 12:42) 

キキ

Bettyさん、こんにちは。
niceとコメントありがとうございます。
前半は追いかけられる恐怖で、観終わると前半の意味を考える映画でした。怖いだけではないので是非観てくださいね。
シガー役の役者さん、アカデミー賞ではとっても素敵でした。
髪型って大切なんだなっっ・・て思いました^・^。

by キキ (2008-03-12 07:30) 

coco030705

この映画のハビエル・バルデムはすごく不気味ですね。
でもアカデミー賞受賞式でインタビューに答えていた彼は、
年相応な感じで、とっても明るく英語が流暢な人でした。
頭のよさそうな、根っからの役者って感じです。
by coco030705 (2008-03-13 18:43) 

キキ

cocoさん、コメントとniceありがとうございます。
役の為とはいえ、元々は素敵な役者さんなのであの髪型には抵抗があったみたいですね。
今、来日中みたいでインタビューでもそう答えていらっしゃいました。
by キキ (2008-03-13 18:56) 

キキ

xml_xsl さん。
niceありがとうございました。
by キキ (2008-03-21 19:24) 

バラサ☆バラサ

謎の映画です。

後半のドタバタ感なんて、ビックリ。
アントンを追うはずの殺し屋、自信満々だったのに、瞬殺だし。

皆、自信過剰でしたけど。皆、挫折。
by バラサ☆バラサ (2008-03-22 00:16) 

キキ

バラサ☆バラサさん、こんばんは。
コメントとniceありがとうございます。
見終わった後、「え?」ってなってしまう謎の映画でした。
試写会の後に前売り券を売ってるところも謎でした。
もう一回観ろってことですよね。


by キキ (2008-03-23 01:22) 

丹下段平

「酸素ボンベ」と文字にすると全く怖くないんですけど、この恐ろしさは観た人じゃないと分からないですよね。
確かにラストは分かりにくいので、僕ももう一度観直してみたいです。
by 丹下段平 (2008-04-02 02:02) 

キキ

段平さん、niceとコメントありがとうございます。
酸素ボンベが武器ってすごいですよね。
武器的には重くないのかしら、なんて余計なことを考えないほど怖い殺し屋でした。
こんなに怖い映画は映画館で観なきゃ損です。
by キキ (2008-04-03 07:30) 

しまうま

 遅まきながら見てきました。いや〜明日から仕事って日曜に見る映画じゃないですね。勧善懲悪ではなくて、勧悪懲善って感じですね。
 何かのメッセージが込められているとしたら、「今のこんな世の中で本当にいいと思っているのか?」なのか、「こんな世の中だから自分の身は相手を殺してでも守らなければならない」なのか。
 ウディ・ハレルソンが全然凄腕じゃなかったり(あっさり後ろを取られるし丸腰だし)、最後の事故でシガーが死ぬかと思うとそうでもなく、トミー・リー・ジョーンズは結構腕利きの保安官のようなのに、あっさり事件を諦める。

 何とも収まりの悪い物語で、新聞の映画評も絶賛だし、見ている者を引き込むもの凄い力を持った作品だと思いますが、何度も見たくなる映画じゃなかったです。私には。
by しまうま (2008-04-20 23:55) 

キキ

しまうまさん、こんばんは。
niceとコメントありがとうございます。
数日間考え、これは何回か観ないとわからない映画かな~と思いました。
お金を盗んだ男は殺し屋に殺され、お金はその妻が使ってしまい殺し屋には戻らない。その妻も殺し屋に殺され、殺し屋を追う男もあっけなく殺され、保安官は犯人を見つけることなく引退し世を嘆く。
お金も命も使命も何も残らない、不思議な映画でした。


by キキ (2008-04-21 22:30) 

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。