バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) [映画【は行】]
第87回アカデミー賞では9部門でノミネートされ、作品賞、監督賞、撮影賞、脚本賞を受賞。
「バベル」「21グラム」などのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。
この監督、私ちょっと苦手かも…と思って観たのですが、これがなかなか深い映画でした。
まるでワンカットで撮影されたかのようなカメラワークが話題となってました。
とても長い不思議なタイトルの意味もラスト近くでわかるようになっています。
色んな解釈が出来る映画ですが、私の解釈です。
思うに主人公のリーガン(マイケル・キートン)は精神が病んでいます。
触ってもいないものが動かせたり、壊したり、体が宙に浮いたり。
かつて自分が演じた『バードマン』の声が聞こえてきたりの幻覚、幻聴があるのです。
でも幻聴も幻影も、本人にしてみればそれは真実。
リーガンはかつてヒーロー映画『バードマン』で一世を風靡した俳優。
今でも外を歩けば「バードマンじゃないか!」と写メられたりもするのです。
人々から忘れら去られたわけじゃない、でもこのまま落ち目の俳優のままでも終われない。
自分がかつて俳優を目指すきっかけになった小説を脚色をして、無謀にも舞台でもう一回再起するつもりなのです。
今はプレビュー公演に向けての準備をしているところで、評判もまずまずと言われているのですが彼の心は不安でいっぱい。
〝ブロードウェイってところは舞台より映画を下にみている。
落ちぶれたハリウッド俳優なんかが来るところなんかじゃないんだよって思っている。”
ブロードウェイには有名な舞台評論家がいて、プレビュー公演を観て彼女が面白いって書けばその舞台は大当たり。
でも彼女にこき下ろされたら最後、いくら頑張ってもそこでオシマイ。
そんな裏事情も描かれていくのです。
脇役の下手くそな俳優が怪我をして(リーガンの超能力で怪我をさせて?)、代役に有名舞台俳優マイク(エドワード・ノートン)がやってきます。
そしたらマイクは主役のリーガンをくってしまう演技をするのです。
とにかく人生は思った通りにはいかない事ばかり起きるのです。
身勝手な共演者に手を焼き、娘のサム(エマ・ストーン)との不仲に悩み、評論家の酷い言葉に傷つき、どんどん落ち込んでいくリーマンはバードマンと共に空に舞い上がり空を飛び…。
でも実はタクシーに乗っていたんだよ…なんてオチに笑わされるのですけれど。
監督はとてもブラックに落ちぶれた俳優を追い詰めていきます。
今のアメコミ映画ばかりのハリウッドにもチクリと釘を刺しているようです。
こんなにもユーモラスに、そして残酷に描けるのは監督がアメリカ人じゃなくてメキシコ人監督だというお蔭かもしれないと思うのです。
アメリカにはかつての栄光を引きずる俳優は沢山いるはずですものね。
他人事じゃない、とハリウッドのアカデミー会員たちはこの病んだ男の姿に笑って共感して、そしてよくぞ描いてくれたと喝采したのだと思うのです。
「セッション」よりドラムが効いた映画でした。面白かったです。★★★★★
こんにちは。
とてもいいレビューだと思いました。よくこの映画のことがわかるように書かれていると思います。
私はこの作品が苦手だったので、その先入観をもったまま書きました。だからなんだか中途半端なレビューになっているなと思います。キキさんのようにもっと客観的に書かなきゃと思わせるようなレビューでした。アカデミー賞授賞式(私は未見)でマイケル・キートンがブリーフ一枚で登場して大うけだったとか。↑のレビューを読んだら納得できますね。(^^)
by coco030705 (2015-05-25 17:45)
coco030705さん、こんにちは。
少し前に観て、書こうと思いつつそのままにしていました。
忘れてしまったところもあるんですが印象的なラストでしたね。
私の思うところやっぱり彼は落ちてしまったんじゃないかと思います。どう思われますか?
授賞式でパンツ一丁で現れたのは司会のニール・パトリック・ハリスでした。
マイケル・キートンが映画の中で劇場から閉め出されて観客の前を走って入口に戻るシーンのオマージュだったんだとか。
司会のニール・パトリック・ハリスは『ゴーン・ガール』でロザムンド・パイクに殺される元カレを演じていた俳優さんです。
by キキ (2015-05-25 22:29)
こんばんは。
あ、授賞式でやったのは、司会者のニールですか、なるほど~。あの人、ゴーンガールの中ではとっても気の毒な男性でしたね。でも司会者としても超一流ってことなんですね。すごいな。
ところで、バードマンですが、このラストが観客にゆだねられているところがミソですね。私もそうかなと最初思ったんですが、娘役のエマちゃんが、窓から最初下を見て、それから上を見上げて、何かを見つけたように、シニカルな笑いをもらすところがそうか!って。だから私はリーガンとバードマンが一体化して空を飛んで行ったんだなって解釈して、ちょっとホッとして映画館を出ました。そのくらいのユーモアは残されていたように思います。
by coco030705 (2015-05-25 23:12)
coco030705さん、こんにちは。
お返事をありがとうございます。<(_ _)>
私はハリウッドの有名な俳優さんや監督さんもうつ病やアルコールや薬物など色んな理由で自殺される方は多いので、エマ・ストーンの視線でたとえ飛び降りてもヒーローの様に飛んで助かって欲しいという希望を現したのかなって思いました。
解釈も人それぞれで面白いですよね。
正解は監督に聞かないとわかんないですがユーモアがあるラストはいいですね。
by キキ (2015-05-26 21:36)
makimakiさん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2015-05-26 21:37)
「セッション」よりドラムが効いた映画・・・
なんか、この1行がおもしろいですね(^.^)
言い替えると、人生のあれやこれやがしっかり織り込まれている?
かつて浴びていた、そのスポットライトの高揚や栄光を、もう一度!!!
・・・仏様でもない限り、ニンゲンは枯れることなどできないのでしょうね(^_^;
by のらん (2015-05-30 07:39)
ネオ・アッキーさん、こんにちは。
niceありがとうございます。
by キキ (2015-05-30 22:15)
のらんさん、こんにちは。
そうなんです。
ドラムの音が効果音というのか、演奏としての『セッション』よりお話に響いてくる演出でした。さすがベテラン監督さんです。
人は誰でも歳を重ねていくのですが、過去や家族を身にまとってるんで若い頃のように自由に動けないのですね。
飛んでしまうのか、深いなあ…と思いました。
by キキ (2015-05-30 22:30)
さらまわしさん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2015-05-30 22:35)
mayuさん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2015-05-30 22:36)
non_0101さん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2015-05-30 22:37)
ケイトさん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2015-05-31 11:21)
ドラムが印象的でしたね~
私はまだ「セッション」を未見なので、出だしからドラムが鳴り響いた時、
劇場を間違えたかとドキドキしてしまいました(^^ゞ
ここまで頑張ったら、ぜひ、アカデミー賞主演男優賞をあげたかったです☆
by non_0101 (2015-05-31 21:48)
non_0101さん、こんにちは。
今年のアカデミー賞受賞作品は面白いものが多かったですね。
「セッション」を先に観てこちらを観たのですが、ドラムを叩く方がお話の途中出てきてそこでも笑いました。
随所で笑ってしまう映画でしたけど重い題材なんですよね。
主演男優賞、残念でした。
by キキ (2015-05-31 23:01)
人生の陰影か比喩的に描かれているみたいで見応えがありそうですね!
キキさんのレビューも読み応えあって参考になります(^-^)
by あゆこ (2015-06-06 11:09)
あゆこさん、こんにちは。
コメントをありがとうございます。
なんと書いてよいのか悩んで放り出してたので忘れてる部分もありましたから…参考になればよいのですが。
過去の栄光を引きずる男の数日間をユーモラスに描いたお話でした。
by キキ (2015-06-08 19:01)