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みかんの丘 [映画【ま行】]

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テアトル梅田にて。
「みかんの丘』は『とうもろこしの島』と一緒に公開されていて、先に『とうもろこしの島』を観てからこちらも鑑賞しました。

『とうもろこしの島』では敵対する二つの民族の間に流れる大きな川の中州にトウモロコシを植える老人の話です。
戦争が起きる前からずっと行われていた伝統的なトウモロコシ栽培。
老人と孫娘のふたりの映画ですがセリフがほとんどなくて、時々遠くに聞こえる銃撃戦の音、敵を探してボートでやってくる兵士たち。
ラストも衝撃的で、こんな終わり方をしてしまうのかと驚いてしまいました。

二つともアブハジア紛争がテーマの反戦映画なんですが、この国の背景が日本人にはちょっとわかり難い映画です。
私もまったくわからないまま鑑賞しました。
内容に触れますのでこれからご覧の方はご注意ください。

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1991年にソ連が崩壊した後、その一共和国だったジョージア(=グルジア)は独立します。

しかし、ジョージア国内で民族運動が高まり、西部のアブハジア自治共和国が反発、翌年に両者の間で激しい戦闘となってしまいます。
〝アブハジア紛争”と呼ばれるこの戦闘で多くの難民を出し、国は戦火に包まれ荒れ果ててしいます。

そんなアブハジア紛争中のお話です。
アブハジア自治共和国のエストニア人集落で(ほらまったくわからなくなってきたでしょ)老人イヴォ(レンビット・ウルフサック)とマルゴス(エルモ・ヌガネン)は家の前で戦って傷ついた兵士をみつけます。

イヴォとマルゴスはエストニア人です。(バルト三国のエストニア、つまり紛争には関係ない民族です)

エストニア人はほとんど自分の国に帰ってしまっているんですが、この村には数人のエストニア人が残っていました。
マルゴスはどうしても自分の山のみかん(マンダリンって言ってます)を収穫したいので、そのみかんを入れるための木箱をイヴォが作っているのです。

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助けた青年はアブハジアを支援するチェチェン兵のアハメド(ギオルギ・ナカシゼ)。
家族のためにお金を稼ぐために傭兵になってここで戦っています。

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そしてもう一人はジョージア兵のニカ(ミヘイル・メヒス)。
紛争の前は役者をしていたと話すニカ。

先に傷が治ってきたアハメドはニカを今にも殺しそうな勢いでした。
でもこの家では殺し合いは許さないという命の恩人イヴォの言葉に従って数日間を過ごします。

この家を出たらお前をぶっ殺すからな、とニカを脅すアハメド、アブハジア側とジョージア側の敵兵同士とそしてどちらでもないエストニア人の老人との3人の生活が始まります。

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宗教も言葉も育った環境も違う2人の間には少しづつですが心が通じ合いはじめます。

やがてこの戦争が終わったらアハメドと二人で役者に復帰したニカの舞台を観に行って拍手をおくりたいなんてイヴォからの話も出て笑い合う穏やかな時間もやってきます。
ですがそんなある日、イヴォの家の前にアブハジア軍のトラックがやってきて、あっという間に銃撃戦が始まるのです。

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国と国、民族と民族の戦いだと個人の顔が見えず平気で殺し合えるんですね。

イヴォの友人のマルゴスも、ジョージア兵のニカもこの銃撃戦で命を奪われてしまします。
その怒りで味方のアブハジア軍をアメハドは全員殺します。

助かったイヴォとアメハドはみかんの木箱の板でマルゴスとニカの棺桶を作ります。
マルゴスは自分のみかんの山に葬られ、ニカは別の場所に埋められます。

イヴォがニカの埋葬場所に選んだ場所は自分の息子の墓の隣でした。
実はこの紛争でイヴォの息子も亡くなっていた事をアメハドは初めて聞かされます。

「俺も死んだらここに埋めてもらえたのか?」とアメハド。
「お前はもうちょっと離れたところにな」そう言って笑うイヴォ。
やがて傷も治ったアメハドはイヴォの家を出ていきます。

戦争は大切な人の命を奪い続けます。
それでもなお人間として、敵を憎む人生を送らない老人の姿に心が熱くなる静かな映画でした。

監督・脚本:ザザ・ウルシャゼ 


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コメント 14

キキ

はじめてのDOIさん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2016-10-20 19:45) 

キキ

AKIさん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2016-10-20 19:46) 

キキ

coco030705さん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2016-10-20 19:47) 

のらん

わぁ、ちょっとドキドキしちゃった。。こんな映画を観なきゃねぇ。。
タイトルからいいじゃない? 「とうもろこしの島」と「みかんの丘」
世界も、政治も、私欲ばかりに夢中で、大切なことには心を閉ざしているけれど、
「生きる」ということは、とても静かでシンプルなことなのですよね。
by のらん (2016-10-22 07:52) 

キキ

のらんさん、こんにちは。
ザザ・ウルシャゼ 監督の2作同時上映やってました。
人間と戦争と自然の映画で、でも舞台のアブハジア紛争がよくわかなかったのですが後で調べました。
『みかんの丘』のイヴォ役のレンビット・ウルフサックのファンにもなりました。

by キキ (2016-10-23 19:38) 

キキ

ネオ・アッキーさん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2016-10-24 23:52) 

キキ

月夜のうずのしゅげさん、こんにちは。
niceをありがとうございます。
by キキ (2016-10-24 23:55) 

ぼんぼちぼちぼち

みかんの丘、非常に高い評価を受けている作品なので 観てみようと思ってやす。
予告編貼ってくださりありがとでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2016-10-31 19:53) 

キキ

ぼんぼちぼちぼちさん、こんにちは。
コメントもありがとうございます。
最近すごく高い評価になってますよね。
私もびっくりしました。
この国周辺の情勢や民族の関係がわからないと難解かもしれません。
ご感想をお聞かせください。
by キキ (2016-11-04 09:10) 

ぼんぼちぼちぼち

「みかんの丘」昨日 観てきやした。
ニカが味方軍を殺し そしてニカとマルゴスが殺されてしまうところ、涙が出てしまいやした。
あの辺りの国の人は、感情表現を やはり西ヨーロッパやアメリカとは違って 派手に出さないなぁと思いやした。
とても深い感動を覚える作品でやした。
観てよかったと思いやす。

by ぼんぼちぼちぼち (2016-11-10 21:26) 

のらん

お久しぶりです!
ずっと更新がなかったので、どうしていらっしゃるかな〜って思ってましたが、お元気そうでよかったです(^-^)
過去記事まで、たくさん読んでいただいて、ありがとう♡
猫たちは、世界情勢も地球温暖化もなんのその。。今日お腹がいっぱいで、気持ちよく昼寝できる場所があればいいんだよ、って、あいかわらず、ぼへぼへと暮らしていますよ(^^;;
by のらん (2017-09-14 08:02) 

キキ

すみません。いつも映画は観てますがサボるんです。
そういえば一昨日エストニアに旅行してきました。
「みかんの丘」の主人公の国・エストニアだわ・・・って思いながら
歩きました。
by キキ (2017-09-19 22:59) 

のらん

へぇ〜! エストニアから帰られたばかりなのですね(^.^)
今は、もう、のどかな街になっているのでしょうか?
・・・スミマセン。。私も、世界情勢に疎い、ぼへニンゲンなので。。(^_^;
みかん、召し上がりましたか?(^m^)
by のらん (2017-09-23 07:17) 

キキ

旧市街地だけだったんでみかんはありませんでした。
琥珀のお店がたくさんありました。
あと、おばあちゃんが編んでる毛糸の靴下とかでした。笑
by キキ (2017-10-30 19:37) 

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