IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 [映画【あ行】]
「スタンド・バイ・ミー」っぽいって聞いたんですけど、まさにその通り。
期待以上でした。
その頃、図書館からキングの原作を借りたら枕にするには高すぎるほど超ぶ厚い本でびっくりしました。
なにも一冊にまとめなくても分けたらいいのにって。
今回の映画は分けられていて子供の頃の部分だけです。
下水の下から覗くピエロの顔…。
ポスターの後ろ姿にもなってる幼いジョージはこの後ピエロに連れ去られ消えてしまします。
大人がほとんど出てこなくて(むしろ出てくる大人は子供の敵)子供たちは自分たちだけで問題を解決しないといけません。
こいつは地縛霊なんですかね。
その頃の「怖い」感覚が蘇るような恐怖がずっと味わえました。
ヒロインの少女がとても可愛い。
太っちょのベンの恋が切ない。
元々、少年時代と大人になってからので一つのお話。
次は27年後の大人になったビルたちとの戦いとなるんですが、少年少女の戦いがあまりに面白かったので続編もみたいです。
アシュラ [映画【あ行】]
韓国映画です。
観たいと思いつつ時間は過ぎて、でも今週で終わりそうなので駆け込みで観てきました。
ノワール映画(虚無的・退廃的・悲観的な傾向をもつ犯罪映画)と言えば少し前ならフランス映画やハリウッド映画でしたが今ではぶっちぎり、韓国映画がトップ。
映像が半端ない暴力の連続。
今回も皆殺しです。
前回観た韓国映画の『コクソン』の主演でヘタレ警察官役だった(クァク・ドゥオン)が今回正義の検事、妖しい霊媒師役のフアン・ジョンミンが悪徳市長。
前回とは全く違う役をお二人見事に演じてます。
架空の都市アンナム市。
街の利権を牛耳る市長ソンベ(ファン・ジョンミン)は金の為にはどんな手をも使う悪人。
たとえ訴えられてもその相手を裏から手をまわして殺してしまうなんて当たり前。
市長ソンベの腹違いの妹が妻の刑事ドギョン(チョン・ウソン)は、末期ガンの妻の入院費のためにソンベの裏の汚い仕事を全部請け負っていた。
今回もそんな裏仕事を片付けたある日、同僚刑事を手違いで死なせてしまうドギョン。
その事件がきっかけで検事チャイン(クァク・ドゥオン)に、市長の不正の証拠を持って来いと脅されることとなる。
市長逮捕に燃える検事チャインと私欲まみれの市長ソンベの間に挟まれ、「お前たちの喧嘩に俺を巻き込むな」と言い放つ汚職刑事ドギョン。
ドギョンを兄貴と慕う若手刑事(チュ・ジフン)も巻き込み、暴力、殺人、狂気がぶつかり合い、悪が勝つのか、果たしてこの街には正義はあるのか…怒涛のラストまでノンストップです。
なんといっても悪徳市長を演じるファン・ジョンミンが今回も圧巻。
いい人ぶりながら、でも同時に目で悪事を指示する演技がおぬしもなかなかの悪じゃのう、って感じです。
チョン・ウソンが主役なんですけど、前から思ってたけどこの人誰かに似てるのよね…あ、トム・クルーズに似てるんだ、って思ってからはこれはやっぱり××してるのかしら?なんてそっちが気になってしょうがない。
その綺麗なお顔時間が進むにしたがって首は締められるはタバコの火は額に押し付けられるわ、ぼっこぼこに殴られるわの傷だらけ。
チョン・ウソンの中盤のカーアクションがこれまた超すごくて、ひえ―ってくらい迫力があるんです。
奥さん手遅れだけど手術のために病院に行くんだけどボコボコに殴られた後だから顔からも口からもぼたぼたと血は流れ放題、普通病院のドクターもこんな人が来たらこっちが交通事故に遭ったんじゃないかとぶっ飛ぶと思うんだけど誰も騒がない。なんだこの街は。
バンバン拳銃を撃ちあうラスト、しかも舞台は祭事場なんだけど、救急車を呼んでくれと哀願する検事だけれど、いやいや、こんだけ撃ち打ち合ってたらパトカー普通、通報あって来るし、と思うけど来ないし。
息つく暇も与えない怒涛の展開で面白かったです。
でも比べちゃおうと殺し合いばかりじゃない『コクソン』の方がお勧めかな。
米・第89回アカデミー賞授賞式(WOWOW) [映画【あ行】]
こんにちは。
最近、更新を怠っておりましたが今日行われたアカデミー賞授賞式の様子を簡単にご紹介いたします。
世界最高峰の映画の祭典、アカデミー賞授賞式が今年も日本でも生中継!
アメリカは日曜の夜だけど日本は月曜の午前中です。
仕事は休んでTVの前で授賞式が始まるのを待ってます。
会場はLAドルビーシアター。
14部門でノミネートの「ラ・ラ・ランド」が注目された今回。
それに絡んでラストにものすごいアクシデントが起きましたが、逆に考えると受賞作品が漏れたりしてない、本当に公正に行われている証拠かななんて思いました。
まず、ジャスティン・ティンバーレイクによる歌とダンスで幕開け。
曲はノミネート曲の"Can't Stop The Feeling" ~「トロールズ」(原題)~ 。
会場は総立ち、でも司会はジミー・キンメルを迎えた時には着席してましたけどね。
ジミー・キンメルはニューヨーク生まれのコメディアン。
ABC制作の『ジミー・キンメル・ライヴ!』という冠番組があり、マット・ディモンとお互いを茶化すビデオを制作して全米で話題になっている人。
宿敵・マット・ディモンがプレゼンターとして会場に来てるので二人の茶化しあいも注目されるところです。
最初っからトランプ大統領に絡んだジョークで会場を沸かせてました。
受賞の発表順です。
◆助演男優賞受賞 マハーシャラ・アリ「ムーンライト」
◆メイク・ヘアスタイリング賞受賞 「スーサイド・スクワッド」
◆衣装デザイン賞 「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」
◆長編ドキュメンタリー賞 「O・J:メイド・イン・アメリカ(原題)」
◇この映画、O・J・シンプソンの過去から現在までを追ったTVドキュメンタリーを映画にしたもの。
なんと7時間の上演時間だそうです。受賞したので日本でも上映されるかもですね。
上映されたら絶対みたい1本です。
☆ここで歌曲賞ノミネートの"How For I'll Go"~「モアナと伝説の海」より
リン=マヌエル・ミランダとアウリィ・クラヴァリョの歌。
☆AMPAS会長のシェリル・ブーン・アイザックスからの挨拶。
☆天井からキャンディのパラシュートが落ちてきて会場が湧きます。
◆音響編集賞受賞 「メッセージ」
◆録音賞受賞 「ハクソー・リッジ」
☆名誉賞の紹介もありました。
受賞はジャッキー・チェン、アン・V・コーツ、リン・スタルマスターの3人です。
◆助演女優賞受賞 ヴィオラ・ディビス 「フェンス」
◇この映画は人生を描いた映画だと熱く力強い受賞のスピーチ。
涙ぐむ人もいるほどでした。
◆外国語映画賞受賞 「セールスマン」(イラン)
◇アスガー・ファルバディ監督が授賞式をボイッコット。
米に住むイラン系女性が替わりにオスカー像を受け取りました。
監督からのメッセージは代読。
監督は過去に「別離」で外国語映画賞受賞歴ありで今回は2回目の受賞です。
☆スティングの歌、"The Empty Chair"
~「ジム:ジェームズ・フィーリー・ストーリー(原題)より~
◆短編アニメ映画賞受賞 「ひな鳥の冒険」
◆長編アニメ映画賞受賞 「ズートピア」
☆カリフォルニアのバスツアーの方々を会場に案内して出演させるコーナーあり。
◆美術賞受賞 「ラ・ラ・ランド」
◆視覚効果賞受賞 「ジャングル・ブック」
◆編集賞受賞 「ハクソー・リッジ」
◆短編ドキュメンタリー賞受賞 「ホワイト・ヘルメット-シリアの民間防衛隊-」
◆短編実写映画賞受賞 「合唱」
☆司会者がトランプ大統領に生ツイート。
☆すでに受賞済みの「科学技術賞受賞」の紹介
…アメリカではオタクってロボットや特撮を担当する科学者の事を指すみたいです。
◆撮影賞受賞 「ラ・ラ・ランド」
◇歌曲賞ノミネートの"City of Stars"~「ラ・ラ・ランド」より のパフォーマンスが入ります。
◆作曲賞受賞 ジャスティン・ハーウィッツ「ラ・ラ・ランド」
◆歌曲賞受賞 "City of Staes" ジャスティン・ハーウィット「ラ・ラ・ランド」
◇ミュージカルなので「ラ・ラ・ランド」強し!
作曲賞、歌曲賞と2つのオスカーを受賞したハーウィッツはデイミアン・チャゼル監督のハーバード大学の時のルームメイト。
才能が相乗効果で花開いたって感じです。
☆昨年から本年度までの間に亡くなった映画関係者の「追悼」が入ります。
◆脚本賞受賞 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
◇プレゼンターはベン・アフレックとマット・ディモン。
ここで司会者からの意地悪で笑わせます。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」はマット・ディモンが制作にかかわっていています。
マット・ディモンはこの映画で主演も出来たんですが幼馴染のベン・アフレックの弟のケーシー・アフレックに主演を譲っています。
そしてなんと、この少し後にケーシー・アフレックが主演男優賞を受賞することになります。
◆脚色賞受賞 「ムーンライト」
◇脚本賞と脚色賞はどう違うのかっていうと、脚本賞はストーリーを自分で一から考えたもの。
脚色賞とは小説などの原作があるものを映画用にしたものの違いです。
◆監督賞受賞 デイミアン・チャゼル 「ラ・ラ・ランド」
◇32歳、最年少での監督賞の受賞となりました。次の作品が楽しみですね。
◆主演男優賞受賞 ケーシー・アフレック 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
◇マット・ディモンは主演を断った映画です。
◆主演女優賞受賞 エマ・ストーン 「ラ・ラ・ランド」
◆作品賞受賞 「ムーンライト」
最後の作品賞のプレゼンターは「俺たちに明日はない」の往年のスター、ウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイ。
お二人とも歳を重ねられたな~なんて観てました。
でも、アカデミー賞ではもったいぶらずにすぐに受賞作品が読み上げられるのに、ウォーレンは開いた赤い封筒の中の受賞作品を発表しないのです…?
まさか字が読めないってことはなさそうだけど、困った顔でフェイに渡すウォーレン。
手渡されたフェイがためらわず「ラ・ラ・ランド」!って公表しました。
「ラ・ラ・ランド」が7部門に受賞ということで、ステージに上がったプロデューサー達次々と喜びの受賞の挨拶、主演のエマ・ストーンもステージ上で涙ぐんでスピーチを聞いている最中、なんと!!
「受賞は間違いがあったようです、読み違いです、作品賞はムーンライトです!」
と訂正が入るというハプニング、会場は騒然としてしまいます。
なんでこんなことになったのでしょうか。
どうやら封筒の中にあったのは『主演女優賞 「ラ・ラ・ランド」 エマ・ストーン』と書かれた紙が入っていて、困ったウォーレンがフェイに渡してしまい、そんな事とは気づかないフェイがそこに書かれた「ラ・ラ・ランド」とそのまま公表してしまたもののようです。
「何をやったんだよ!ウォーレン・ベイテイ!!」と突っ込む司会者。
そこで「ジョークとかではなく本当に、間違いだったんだ」って釈明するウォーレン・ベイティ。
・・・と、いうことは悪いのは番組の裏方さんなんですよね。
全部同じ赤い封筒だから、作品賞の封筒じゃなくてすぐ前に回収していた主演女優賞の封筒をどういう訳か誤って作品賞プレゼンターに渡してしまっていたようです。
そうとは知らず次々と感激のスピーチをする「ラ・ラ・ランド」のプロデューサー達、3人目にストップが入り、まったく気の毒なことにしっかりと握りしめていたオスカー像は「ムーンライト」関係者の手に渡ることに。
大トリの作品賞受賞の「ムーンライト」も戸惑いながらも喜びの受賞スピーチで今年のアカデミー賞授賞式は閉幕しました。
去年は白人ばかりの白すぎる受賞式と評判が悪かったですが、今年は一転、多様な人種の受賞となったり、アカデミー賞では人種は関係ない、体重と歳は関係あるけどね、なんて司会者のジョークが冴えた式でした。
プレゼンターのハリー・ベリーやスカーレット・ヨハンソンのドレスもものすごく美しかった。
でもなんといってもラストの作品の賞間違いアクシデントで全部ぶっ飛んでしまったのは確かです。
観ている方は映画を観ているような大どんでん返しのドキドキ感があって面白かったけどね。
「ラ・ラ・ランド」のプロデューサー達は間違いとわかると素早く正しい対応。
受賞は逃したけど、「ムーンライト」って書かれたカードをカメラの画面に高く掲げて映したあの姿は後世まで残る名シーンになったはずです。
さて、興奮と混乱のアカデミー賞授賞式を観たあとは映画館に行かなきゃね。
AMY エイミー [映画【あ行】]
今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞映画です。
2011年7月23日、今から5年前にアルコール過剰摂取で夭折したイギリスの歌手、エイミー・ワインハウス。
ミック・ジャガーやトニー・ベネットらにその歌声を絶賛され、今もレディー・ガガ、アデルら、多くのミュージシャンに影響を与えています。
彼女の突然の死。
その謎をデビュー当時から追ったドキュメンタリ―です。
享年27歳という若さでした。
1983年、ユダヤ系イギリス人の両親の元に生まれたエイミーは、父親の浮気での離婚という複雑な家庭環境が原因で幼いころから心に傷がある少女として成長。
でも彼女には当時の音楽プロデューサー・サラーム・レミに
「彼女の歌を聞いた瞬間、本物だと思った。まるで65歳の熟練のジャズ歌手みたいな歌い方だ。18でこれじゃ25になったらどうなるんだろうと思った。」と言わせる天才的な声がありました。
やがて18歳でレコード会社との契約、20歳でデビュー。
ファーストアルバム『Frank』は英国内では67万枚のヒットとなり、続くセカンドアルバムの『Back To Black』は全英1位、米国でも7位の1200万枚のセールスを記録。
その後シングルの『Rehab』で2008年のグラミー賞5部門で受賞。
この輝かしい経歴の裏で、彼女の私生活は荒れてゴシップまみれ。
『Back To Black』の時は女たらしと有名なと男と付き合いますが彼の方から別れを切り出され、「あなたは彼女の元に戻り、私は戻る、暗闇に」と彼との別れが歌詞に。
さらにその後別の男と結婚すると、夫は薬物中毒やアルコール依存症のとんでもない男で、その影響で彼女自身も麻薬と酒にのめり込みます。
『Rehab』は夫と共にリハビリ施設に入所したこの時の体験が元になっています。
「リハビリに行けってみんな必死だったのよ、でもあたしの返事はNo No NO」
「あたしにはそんな時間はないわけよ、パパが大丈夫だっていうなら尚更ね」
(その後、暴力事件で逮捕された夫はエイミーを捨て他の女性と結婚します。)
自分の実体験をそのまま歌詞にして歌うスタイルのエイミー。
映画では今までは知られていなかった彼女の真の姿を、たくさん残されていたプライベートビデオやエイミーの親しい友人、レコード会社関係者、両親、元夫、元恋人などのインタビューを交えて時系列に語っていきます。
世界的に有名になってしまってからは芸能記者に常に追われる姿が痛々しいです。
2011年6月、死の1か月前、セルビアで2万人の観客を集めた野外コンサートでへたりこみ歌い出すことすら出来ないエイミー。
大変なブーイングをうけ、その後の活動中止が発表されるコンサートでしたが、彼女がその時どんな状態だったのか。
夫と共に始めた麻薬とアルコールで心身ともにボロボロ。
医師からいつ心臓が止まるかもしれないと宣言されていた事実が語られます。
その前の晩も「歌えない、歌いたくない」と言っていた本人を無理やり叩き起こして連れていったのはこれが大金が動くショービジネスの世界の恐ろしさかなと思えました。
父親、恋人、夫はともに女にだらしない男ばかり。
みんな都合よくエイミーを利用しています。
激しい恋愛関係にボロボロになりながら、でも彼女が求めたのはそんな男たちばかりで・・・。
歌うことは好き。
でもそれよりも誰かにただ一人の人として愛されたい。
夫に嫌われないためにはなんでもやってきたエイミー。
そして命までも差し出してしまった、そんなエイミーの不器用な生き方が悲しかったです。
彼女の歌声を改めて聞きたくなる映画でした。
現在大阪では シネマート心斎橋、 シネ・リーブル梅田にて上映中。
監督:アシフ・カパディア
黄金のアデーレ 名画の帰還 [映画【あ行】]
クリムトが描いた「黄金のアデーレ」。
オーストリアの国宝級の名画に、アメリカに住む82歳の女性が返還を求め、オーストリア政府を相手に裁判を起こした実話を映画化したものです。
「アデーレ・ブロッホ=パウアーの肖像Ⅰ」と呼ばれるこの名画はオーストリアの画家グスタフ・クリムトによる実在の女性の肖像画です。1907年に完成しました。
モデルのアデーレはフェルディナントの妻で、1925年に髄膜炎で死去しますがオーストリア・ギャラリーに絵を寄贈してほしいと遺言を残しました。
このアデーレ自身の遺言がオーストリア政府に返還を申請した際に拒ばれてしまう時の一番大きな障害となってしまうのですが、しかし本当の所有権は肖像画を注文した夫、フェルディナントにありました。
フェルディナントはナチスがオーストリアを占領した際にスイスに亡命します。
第2次世界大戦中にオーストリアに残されたフェルディナントの資産はこの絵を含めすべてナチスに没収されてしまっていました。
当時、結婚したばかりだった姪のマリア(ヘレン・ミレン)はオーストリアでのナチスのユダヤ人への迫害から逃れ夫とアメリカへと亡命します。
マリアの心残りは両親を国に残してしまったことでした。
その後はアメリカで長く暮らしたマリア。
ナチスとオーストリアがユダヤ人に行った辛い仕打ちをすべてを忘れてきたように生きてきたマリアでしたが、 新米弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)の助けを借りて80代になった時にオーストリア政府に財産の返還を求めるのです。
絵のモデルとなった伯母との思い出、マリアの結婚式での伝統的なダンス(メジンケ)、ナチスの監視を逃れて旅立った両親との悲しい別れ・・・。
マリアは祖国オーストリアの土を再び踏みしめますが簡単に国宝級の絵を返還してくれるわけもなく、心に傷を負ってアメリカに戻ります。
しかし、最初は気乗りがしなかった弁護士ランディの方が今度は積極的にオーストリア政府に挑み始めます。
頼りなかった若い弁護士の成長にも感動がありますし、長く続く返還への困難な道のりの終わり、ラストで法廷の判決シーンには観客の中から拍手をする人もいたほど感動的なストーリーになっていました。
この絵は今はニューヨークにあるそうです。名画の背景が見えると絵も違ったように見えてきますね。
主役二人の関係がどんどん深くなっていくのでそこが見どころかなと思います。
監督は「マリリン・7日間の恋」のサイモン・カーティス。 ★★★☆
犬どろぼう完全計画 [映画【あ行】]
韓国映画です。
ジソ(イ・レ)は小学生の女の子。
ジソには家がない。
なんでかというと、お父さんが失踪してしまっているから。
車に寝泊まりして小学校へ通っているんだけど、学校ではそれは内緒。
でも親友にばれてしまったの。
有名私立の小学校はお金持ちの子どもたちばかりで、
もうすぐ誕生日のジソは家が無いから誕生会も開けない。
お母さんはウエイトレスで働くけどヘマばかり。
お金がたまるどころか駐車違反で捕まったり、お店はクビになちゃう始末で
こんな調子じゃ誕生日までに家を買うなんて絶対無理。
大人なんかあてにはなりはしない。
そこで親友と小さい弟と3人である計画を練ることにする。
それはお金持ちの犬を盗んでお礼をもらおうって計画。
超お金持ちだったら犬に大金を払えるだろうし、
犬はすぐに返してジソはそのお金で家を買う。
ちょうど500万ウォンで買える素敵な家もみつけたし。
綿密に練った計画で、
狙ったのはお母さんが働いていた店のオーナーマダム(キム・ヘジャ)。
マダムの犬はなかなか賢い犬なので手を焼いてしまうけど、
どうにか捕まえて隠すことに成功。
でもマダムの甥がマダムの財産を我が物にしようと良からぬ計画を企てていたために
完全なはずの計画が変な方向に向かっていくのだった。
アメリカのベストセラー小説を映画化したものだそうです。
でも韓国の小学校の様子とか金銭感覚とかが詳しく描かれていて
韓国っぽくアレンジされてました。
主人公とその弟、親友という3人の子役が演技力抜群。
大人顔負けのセリフと子供目線で常識外れな行動をする大人たち、
親やピザ屋の店員を皮肉っては手玉に取りつつ、自分たちの協力者にしていきます。
お金持ちからなら大金を巻き上げても平気だなんて、こらこら、
小学生のくせにそんな非常識を考え付くんだね。
犬誘拐の理由が誕生会を開きたいという自分勝手なジソなんだけど
子供には見えなかった大人たちの悲しみがわかり始める。
貧乏でも子供を有名私立に通わせる見栄っ張りと思っていたガミガミ母さんにも
心の奥にしまわれた想いが。
お金持ちで不自由もない暮らしだと思っていたのマダムにも死んでしまった息子への愛が。
ジソに優しく協力してくれる浮浪者のおじさんの隠された過去が。
長く生きているぶん大人も今まで大変だったんだね。
伏線もたくさんあってドタバタと心温まるストーリー展開。
悪いことをしたら正直に謝るのが大切で、正直者にはご褒美もあるってオチでした。
人(犬)質のワンちゃん・ウォーリーがとっても可愛くて、
動物と子役がとっても頑張っている映画でした。
監督はキム・ソンホ。 ★★★☆
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン [映画【あ行】]
アベンジャーズシリーズの第2弾です。
前作の2012年の「アベンジャーズ」の「日本よ、これが映画だ」ってキャッチコピーは話題になりました。
興行成績も全世界興行収入ランキングの歴代3位の記録をたたき出しています。
今回もアイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、マイティ・ソー(クリス・ヘムズワース)、ハルク(マーク・ラファロ)などのマーベルコミックヒーローが集結して戦います。
このキャラクターたちのそれぞれの映画を観てないと「ロキの杖ってなに?」突然出てくるサミュエル・L・ジャクソンは誰なのさ?ってことになりそうなので予習した方が楽しめますよ。
天才科学者のトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)はアイアンマンとして何度も人類を救ってきましたが、アベンジャーズにも手におえない危機を避けるために平和維持システムである「ウルトロン」を制作します。
ところがウルトロンは平和を脅かすのは人類であると選択しちゃったのでアベンジャーズは人工知能ウルトロンと戦うというとんでもないことに。
なので今回のキャッチコピーは「世界を滅ぼすのはアイアンマン」です。
ウルトロンの他にもヒドラの残党による人体実験で特殊能力を得た双子、ワンダ(エリザベス・オルセン)とピエトロ(アーロン・テイラー=ジョンソン)がトニーの作った兵器で両親を殺されたとアイアンマンを恨んでいます。
姉、ワンダはテレキネシスやマインドコントロールを操る魔女のような能力を持ってトニーに幻覚をみせて惑わしますし、弟のピエトロは超人的なスピードで移動する能力でアベンジャーズと戦います。
でもホーク・アイとの掛け合いでクスリと笑わせてくれる微笑ましいキャラでもありました。
前作に続いてジョス・ウェドンが監督、脚本を手がけています。
前作の主要キャストがそのまま演じてくれているのも好感度アップの要因です。
ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)の過去やハルクとの関係とか、ホーク・アイ(ジェレミー・レナー)の家族とか、これだけ沢山揃ったキャラクターをそれぞれ掘り下げてくれるのもすごいのですが、とにかくお話の展開が速すぎて1回観たくらいでは細かいストーリーは理解できないところが難点ですね。
相変わらず映像は素晴らしく、前作ほどの面白さは感じませんでしたが次のマーベルのシリーズを観たいならやっぱり押さえていないとだめかなあと思います。
来年全米公開予定の「キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー(原題)」にワンダも参戦することがきまっているそうですし、アベンジャーズの数名の主要キャラは行方不明になったり家族の元にかえったりと交代しそうですしね。 ★★★★
次回公開のアベンジャーズシリーズ第3弾&第4弾「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー(原題)」の2部作では監督は「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」のアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟に交代するとのことです。
アリスのままで STILL ALICE [映画【あ行】]
ジュリアン・ムーアが今年度のアカデミー賞主演女優賞を獲得した映画です。
他のアカデミー賞受賞作品より遅めの公開です。
アリスの年齢、50歳を若いとみるか、親の年齢としてみるか、男性からの立場としてみるか。
鑑賞する方のとらえ方でアリスに同化される方と、アリスの夫や3人の子どもたちという家族側(介護側)に共感する方とで別れると思いますがどちらの目から見ても考えさせられる映画になっています。
すごく若い方が観たらまだピンとはこないかもしれない大人の映画です。
主人公アリスはNYのコロンビア大学言語学教授。
仕事も充実していて優しいお医者さんの夫(アレック・ホールドウィン)と法科大学卒の長女(ケイト・ボスワース)とその夫、医大生の息子(ハンター・ボスワース)と共に今50歳の誕生日を祝ってもらっています。
次女(クリステン・スチュワート)は女優を目指し家を出ているので、大学にもいかず女優だなんて・・とちょっと心配。
でも次女の姿にはしっかりと自分の目標を持っていることを認めないわけにはいきません。
そんな幸福の絶頂であるアリスがある日突然告げられた病名が「若年性アルツハイマー病」でした。
日本にも渡辺謙さん主演の名作、若年性アルツハイマー病を扱った『明日の記憶』があります。
謙さん同様、バリバリに働いているアリスに告げられた病名は今までの努力が全部消えてしまう、これからどうなってしまうのか想像もつかないという恐怖でした。
言語学の教授なのに言葉が思い出せなくなるという屈辱。
しかもこの病気は高学歴の人の方が速く病状が進むというのです。
アリスは最初は夫にも病名を告げることが出来ません。
ジョギングで道に迷って家がわからなくなったなんて夫には絶対言えません。
でも主治医に病名を告げられ次は家族と一緒に来てほしいと言われ、意を決し寝ている夫を起こして「癌なら良かった、病名を他人に言うことが出来る。ピンクリボンをつけ戦うことも出来る。」泣きながら病院に一緒に来てほしいと訴えます。
やがて病状は着実に進み大学の講義も出来なくなります。
仕事を失い、アリスもまた謙さん同様、必死にメモをとりながら記憶をつなぎとめようと努力するのですが確実に抜け落ちていく自分の一部を感じ、まだしっかり記憶があるうちにある事を行います。
それは〝「長女の名前は?あなたの住所は?・・・」という簡単な質問に答えられなくなった時、今から私が言う通りの行動を起こしてほしい。”そんなメッセージを自分のパソコンに残すことでした。
記憶が薄れそんなメッセージを残していたことも忘れていたある日偶然みつけてしまうメッセージファイル。
美しく凛とした自分から贈られたメッセージに従い、引き出しから瓶を見つけ出すアリス。
映画の山場です。
ドキドキするんですけどパソコンに映っているアリスと現在のアリスの対比があまりに残酷で胸が痛いです。
「僕がいるじゃないか、君を支えるよ。」と言ってくれる夫。
でもトイレの場所がわからず失禁してしまう妻を目の前にしてしまうと仕事に逃げてしまいます。
自慢の長女も家族性で遺伝を受け継ぎ自分も母と同じ病気を発症する可能性があると知ると疎遠になってしまいます。
家族だってどう寄り添えばいいのかを迷ってしまいます。
そんな中、一番心配だった次女だけがアリスのそばにいてくれるのです。
アリスがアリスのままでいることとはなんなのか。
記憶を失くしても今を必死に生きて、そして最後に残るのは愛。
そんなラストにまた何回も観たくなる映画でした。 ★★★★☆
原作はベストセラー小説の「静かなアリス」。
監督は自身もALS(筋委縮側索硬化症)の難病と闘っていたリチャード・グラツアーと、共同でグラフアー監督のパートナーでもあるワッシュ・ウエストモアランド。
グラツアー監督は右足の親指でiPadを叩いてコミュニケーションをとって完成させました。
グラツアー監督はこの映画でアカデミー賞主演女優賞を受賞したのですが、その授賞式は呼吸不全で運び込まれた病院の病室でウエストモアランド監督と視聴しています。
そして3週間後に息を引き取り本作が遺作となりました。
海にかかる霧 [映画【あ行】]
韓国映画です。
久しぶりにあ~観なきゃ良かったと思いました。^^;
2001年に韓国で実際にあった「テチャン号事件」をベースに「殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」のポン・ジュノが製作、「殺人の追憶」の脚本を担当したシム・ソンボが監督デビューを果たしたサスペンスです。主演は「チェイサー」などのキム・ユンシク。
最初はのんびりとしていたけど中盤からドロドロの展開に。
不況にあえぐ漁村の漁船チョンジン号の船長チョルジュ(キム・ユンソク)は、中国人密航者を乗船させるという違法な仕事に手を出してしまいます。
大勢の密航者たちは中国から韓国へ金を稼ぐため、家族に会うため、とそれぞれの事情を抱えて密航してきます。
6人の船員は密航者の身の上話を聞いたりのんびりした展開から話は急展開、海上警察の捜査船がやってくるのです。
みつかっちゃならぬと船長は密航者を狭くて臭い魚を収蔵する船倉に押し込めます。
ですが不幸にもオンボロ船、その船倉に有害なガスが発生していたのです。
蓋を開けると密航者ほとんどが死んでいました。
どうすればいいのか…。
悪天候で霧に包まれた海。
船長の命令で遺体を切り刻み海に破棄する船員たち。
精神がおかしくなる者も出始め、やがて船員の一人(ユチョン)がかくまっていた生き残り女性を巡って船員同士も殺し合いが始まります。
船の中の血みどろの密室劇に「船に女を乗せちゃいけない」とか、「海賊船には女は乗せない」とか(パイレーツオブカリビアンでも言ってたよね)、「海に女は不吉だ」とか・・・昔から言うのは神様が怒る為じゃなくて具体的に説明するとこんな悲惨な事態になるからなのか・・・と納得させられてしましました。
人気グループ「JYJ」のユチョンが映画本格初出演してるということで女性観客が多かったですし、ラストのオチも彼で〆るので泣いてる人も多かったようですが怖い、この映画、本当に怖すぎます。
さすが容赦ない韓国映画。
でもいつも思うのですが、韓国映画はアイドルが出てると映画が始まる前に必ず出演者の挨拶が入ります。
これからサスペンス映画を観ようというのにDVD特典ならまだしも、ニコニコ笑いながらの映画の解説はいらないと思うのです。アイドル目当てではない観客も多いのですから。 ★★★
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 [映画【あ行】]
今〝世界一セクシーな男”と言われるベネディクト・カンバーバッチ。
通称〝ベネ様”。
大ヒットのBBCTVドラマ「SHELOCK」でシャーロック・ホームズ役で日本でも大人気ですね。
イギリス人俳優で現在39歳。先月の2月14日に結婚しています。
ご両親も役者で2002年に役者デビュー。
TV映画「Hwaking」で物理学者のスティーヴン・ホーキング博士を演じ、英国アカデミー賞最優秀男優賞ノミネート。
その後は「アメイジング・グレイス(06)」、「つぐない(07)」、「ブーリン家の姉妹(08)」などに出演。
TVドラマ「SHELOCK(10~)」で大ブレイク。
「戦火の馬(12)」、「裏切りのサーカス(12)」などなどを経て「スタートレック・イントゥ・ダークネス(13)」では〝世紀の悪役”と称賛されました。
知性的な役が似合うベネ様のまさにはまり役ともいえる今回の映画は、第2次世界大戦時にドイツの世界最強の暗号エニグマを解き明かした天才数学者アラン・チューリングの波乱の人生を描いた伝記ドラマです。
「エニグマ」ってなんやねん?ってとこから入らなきゃならないんですけど、これは「なぞなぞ」や「パズル」を意味する古代ギリシア語が転じているとのことで、当時ドイツ軍が使用していた「軍用暗号機」の事です。
連合軍はドイツ軍が使用するエニグマの暗号を解読することで戦争を優位にすることを考えます。
神出鬼没のUボートがどこに現れるか、どんな命令が行われているのかが先に分れば戦争に勝てますからね。
そのために英国でも天才数学者を募集、ってとこがすごくない?←もちろん国家機密の仕事です。
こりゃ無理だと思えるほど難解なエニグマの暗号を毎日解読する天才数学者たち。
でも全くはかどりません。
チューリングは巨大なマシンを設計し一人でその作業に集中していくんですが、当然の事ですが他のメンバーは彼を嫌います。
やがてアスペルガー症候群を暗示する少年期と現在が交互に語られていきます。
オレンジ色の人参と緑のグリンピースを一緒に食べることが出来ない少年チューリング。
この頃も高い知能は認められていても友人達からはひどいいじめを受けていました。
興味があることでは驚異的な集中力と知識を持ち、細かいことにこだわり、他人との考えに隔たりがある為にいわゆる「空気が読めない」のです。
そんな彼を理解してくれるのは唯一の親友、クリストファーだけ。
パズルに興味を持たせてくれたのもクリストファーでした。
恋心をもつチューニングでしたが想いを伝えられないままクリストファーは亡くなってしまいます。
結核を患っていたのです。
少年期に暗号と親友に恋したチューニング。
そんな過去が原因なのかチューリングは同性愛者でした。
暗号を解読している頃、同僚で女性数学者のジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)と婚約しましたが解消しています。
同性愛者だったばかりに戦後は悲劇の運命をたどっていきます。
エニグマを解読して劣勢だったイギリスの勝利に貢献し、その後コンピューターの概念を創造し「人工知能の父」と呼ばれた英雄にもかかわらず・・・。
『人と違う事が悪いことなのか。』
この映画の脚本家グレアム・ムーアはアカデミー賞で脚本賞を受賞しました。
その時のムーアのスピーチは授賞式で最も感動的なスピーチとなりました。
『自分自身が16歳の時自殺を試みた、自分が変わっていて他人とは違うと感じ、どこにも属さないと感じていた。でも今はこの舞台に立っている。このひとときを、自分が変わっている、自分は他人と違う、自分にぴったり合う場所はどこにもないと感じている子供のために捧げたいと思う。』というものです。
物語は暗号を解読した瞬間がクライマックスかと思われましたが、それからまた続く緊張の連続。
暗号を解読したことはドイツに知られてはならないのです。
戦争を優位にするために…。
この解読に関する偉業は50年間伏されることになりました。
戦争は戦場で戦っている人たちばかりじゃない。
裏で働く人たちの駆け引きや嘘や裏切りが物語を複雑にして面白いです。
犯罪者として終わる彼の人生。
警官との会話シーンが最もカンバーバッチがチューリングらしいツンとした演技が冴えわたった名演技だった、と脚本家のムーアが語っています。
最後まで気を抜かずに観てね。
アカデミー賞主演男優賞は逃しましたがカンバーバッチの代表作の映画となるはずです。
上映館が少ないですが是非ご覧になってください。★★★★★