みかんの丘 [映画【ま行】]
テアトル梅田にて。
「みかんの丘』は『とうもろこしの島』と一緒に公開されていて、先に『とうもろこしの島』を観てからこちらも鑑賞しました。
『とうもろこしの島』では敵対する二つの民族の間に流れる大きな川の中州にトウモロコシを植える老人の話です。
戦争が起きる前からずっと行われていた伝統的なトウモロコシ栽培。
老人と孫娘のふたりの映画ですがセリフがほとんどなくて、時々遠くに聞こえる銃撃戦の音、敵を探してボートでやってくる兵士たち。
ラストも衝撃的で、こんな終わり方をしてしまうのかと驚いてしまいました。
二つともアブハジア紛争がテーマの反戦映画なんですが、この国の背景が日本人にはちょっとわかり難い映画です。
私もまったくわからないまま鑑賞しました。
内容に触れますのでこれからご覧の方はご注意ください。
1991年にソ連が崩壊した後、その一共和国だったジョージア(=グルジア)は独立します。
しかし、ジョージア国内で民族運動が高まり、西部のアブハジア自治共和国が反発、翌年に両者の間で激しい戦闘となってしまいます。
〝アブハジア紛争”と呼ばれるこの戦闘で多くの難民を出し、国は戦火に包まれ荒れ果ててしいます。
そんなアブハジア紛争中のお話です。
アブハジア自治共和国のエストニア人集落で(ほらまったくわからなくなってきたでしょ)老人イヴォ(レンビット・ウルフサック)とマルゴス(エルモ・ヌガネン)は家の前で戦って傷ついた兵士をみつけます。
イヴォとマルゴスはエストニア人です。(バルト三国のエストニア、つまり紛争には関係ない民族です)
エストニア人はほとんど自分の国に帰ってしまっているんですが、この村には数人のエストニア人が残っていました。
マルゴスはどうしても自分の山のみかん(マンダリンって言ってます)を収穫したいので、そのみかんを入れるための木箱をイヴォが作っているのです。
助けた青年はアブハジアを支援するチェチェン兵のアハメド(ギオルギ・ナカシゼ)。
家族のためにお金を稼ぐために傭兵になってここで戦っています。
そしてもう一人はジョージア兵のニカ(ミヘイル・メヒス)。
紛争の前は役者をしていたと話すニカ。
先に傷が治ってきたアハメドはニカを今にも殺しそうな勢いでした。
でもこの家では殺し合いは許さないという命の恩人イヴォの言葉に従って数日間を過ごします。
この家を出たらお前をぶっ殺すからな、とニカを脅すアハメド、アブハジア側とジョージア側の敵兵同士とそしてどちらでもないエストニア人の老人との3人の生活が始まります。
宗教も言葉も育った環境も違う2人の間には少しづつですが心が通じ合いはじめます。
やがてこの戦争が終わったらアハメドと二人で役者に復帰したニカの舞台を観に行って拍手をおくりたいなんてイヴォからの話も出て笑い合う穏やかな時間もやってきます。
ですがそんなある日、イヴォの家の前にアブハジア軍のトラックがやってきて、あっという間に銃撃戦が始まるのです。
国と国、民族と民族の戦いだと個人の顔が見えず平気で殺し合えるんですね。
イヴォの友人のマルゴスも、ジョージア兵のニカもこの銃撃戦で命を奪われてしまします。
その怒りで味方のアブハジア軍をアメハドは全員殺します。
助かったイヴォとアメハドはみかんの木箱の板でマルゴスとニカの棺桶を作ります。
マルゴスは自分のみかんの山に葬られ、ニカは別の場所に埋められます。
イヴォがニカの埋葬場所に選んだ場所は自分の息子の墓の隣でした。
実はこの紛争でイヴォの息子も亡くなっていた事をアメハドは初めて聞かされます。
「俺も死んだらここに埋めてもらえたのか?」とアメハド。
「お前はもうちょっと離れたところにな」そう言って笑うイヴォ。
やがて傷も治ったアメハドはイヴォの家を出ていきます。
戦争は大切な人の命を奪い続けます。
それでもなお人間として、敵を憎む人生を送らない老人の姿に心が熱くなる静かな映画でした。
監督・脚本:ザザ・ウルシャゼ
マッドマックス 怒りのデス・ロード [映画【ま行】]
第88回アカデミー賞授賞式も目前となりました。
ジョージ・ミラー監督の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』も作品賞・監督賞など10部門でノミネートされ、すでに上映は終わってましたがノミネート記念の再上映になっております。
ちょっと邦題の『怒りのデス・ロード』・・・ってとこが引っかかり、二の足を踏んでいるうちに去年の上映期間に見逃しておりましたが、再上映が始まったのでチャンスと出かけて大正解、皆さん絶賛の通りものすごい映画でした。
敵が味方になっていく、こりゃまるで少年ジャンプでしょうか。
漫画の世界がそのまま映像化されたよう。
時々こんなすごい映画をありがとうっていうのに出会いますが、この映画もそう、映画館で観る映画でした。
もお、何が凄いかってそれは音響、音の洪水です。
エンジン音はもちろん、ビヨ~ンって火を噴くエレキギターをかき鳴らし、ドンドコドン、ドンドコドンと太鼓を叩く男たちがいる車まで行軍するのですよ、ボスのイモータン・ジョ―(ヒュー・キース=バーン)の一団の後ろには!
それでジョーは何をそんなに怒っているのか。
自分の5人の花嫁を、信頼していた女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)が連れ出して逃げちゃったからなんです。
この花嫁たちがもう美しいのなんのって。
フュリオサの故郷の「緑の地」に向かってトレーラーで大爆走。逃げる、逃げる。
それをドンドコドンと追いかけるジョー一団。他の砦のボスにまで声をかけて追いかけるんです。
砦を牛耳るボスは自らハンドルを握り、ウォー・ボーイズと呼ばれる戦闘集団の白塗り男たちを従えてフュリオサとの追いかけっこ、っていうとストーリーがなさそうなんだけど、これがちゃんとあるんですね。おのおのが抱える哀しみとか悲しい過去とか、ほんのつかの間の恋だとか。
大群で爆走する映像が本当にすごいんですが、どうやって撮ったんだろう?
今跳ね飛ばされた男はどうなっちゃったんだろう?
車が故障すると車は走っているままなのに這って車の下を修理してるし、そうしてるうちにブンブンオートバイが飛び跳ねて、上から棒に掴まった男たちが爆薬投げてきたりするし、きゃーっていう間もないくらい次から次に色んな事が起るのです。
で、主人公のマックス(トム・ハーディ)はどこにいるのかというと、ボスのジョーの支配する砦の奴らに掴まって、フュリオサを追いかけるボス達の後ろ~の方にいるウオー・ボーイズの白塗りの男の車の前にくくり付けられているんです、輸血袋として。
この輸血袋っていう役割がよくわからなかったけど、放射線障害で短命なウォー・ボーイズには新鮮な血が必要で生け捕りにされてしまっているようです。
砂嵐に突っ込んで一時はジョー達をまいたフュリオサ。
そこに同じく砂嵐で車が大破したお蔭で助かったマックスが加わり、緑の地を目指します。
砂嵐の去った後、水を浴びながらトレーラーから美女たちが現れる静かなシーンがあるんですけど、そこで耳がジンジンするくらい今までの音響がいかにすごかったのかを実感。
やがてまた戦いの連続になっていくんですけど怒涛の展開に時間もあっという間でした。
とにかくまだ観てない方はお近くの映画館でやってるなら観に行ってください。
私は2D観てから3Dでも観ましたが2Dでもじゅうぶんだと思いました。
最初のマックスが捕まって追いかけられるシーンはとってもスピーディですがすごい早回しで撮られてますね。
全体がそんな感じで、ぎゅっと詰まっているアクション映画でした。
彼らはお腹空いたとか、水が飲みたいとか、眠いとか、疲れたとかっていう生活感が全くないんですけど、まあそれは少年漫画の世界だからね。 ★★★★★
アカデミー賞は音響編集賞は絶対この映画だと思います。作品賞、監督賞もいけるかな~。
ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション [映画【ま行】]
シリーズ5作目です。
原作は『スパイ大作戦』。
不可能を可能にする男、イーサン・ハント。
トム・クルーズは主役はもちろんプロデューサーでもあり、スタントも自分で行うというものです。
IMFのエージェント・イーサン・ハント(トム・クルーズ)は謎の犯罪組織「シンジケート」の正体を追っていた。
ある日イギリスのロンドン本部を訪れたイーサンは敵の罠にかかり拷問を受ける。
謎の美女、イルサ(レベッカ・ファーガソン)に命を救われるイーサンだったが、シンジケートの企みでCIAから国際手配を受けるお尋ね者になってしまう。
それから半年後、IMFはCIA長官アラン・ハンリー(アレック・ボールドウィン)によって解体させられてしまっていた。
イーサンは謎の組織の正体を探りながら一人身を隠していたが、IMFの仲間のベンジー(サイモン・ペッグ)をオーストリアのオペラ座に呼び出すのだった…。
シリーズも長くなりましたのでアクションもどんなものが練られているのかが注目の映画です。
前回はドバイの超高層ビルにぶら下がってたイーサン。
今回は高度1500メートル、時速400キロで飛んでる軍用機にしがみつき機内へと侵入を試みます。
でもなかなか味方のハッキングが手間取って中に入れない~。
この撮影は監督のOKが出るまで8回も撮影したそうです。
そして酸素ボンベなしで6分も潜るという息も詰まる水中シーンあり、モロッコ・カサブランカではバイクで颯爽と走り抜けるというアクションがテンポよく次々に用意されています。
いつも絶体絶命にもなるんだけど、今回は仲間がうまいこと助けてくれて笑ってしまいます。
私が好きだったのはウィーンのオペラ座。う~ん、行ってみたい、オペラ座。
タキシードやドレスで正装した観客の観ている舞台裏での戦いです。
そこでは以前イーサンを助けた謎の美女がまたもや登場、なんと銃で要人を狙っています。
そこには別に怪しい男もいて、どっちが敵でどっちが味方?おっと、どっちも敵かしら?
暗殺者は楽器型の銃で、楽譜の音符に合わせて大統領暗殺のタイミングを狙ってるんですよ。
おしゃれです。
もしかするとむっちゃ仲良しのジェレミー・レナーとか、CIAとか、謎の美女がとか、最後の最後に裏切るどんでん返しがあるのかも、なんて疑いながら観てたんですがそれは期待外れ。
悪い人は悪く、いい人はいい人のまま。
拉致された先でも水中でも謎の美女が現れてちゃっかり助けてもらっちゃうイーサンなのでした。
トムは女優さんを見つけるのが上手いですね。
ドレス姿あり、水着あり、バイクにも乗るレベッカ・ファーガソンがとっても魅力的です。
もちろんトムも素敵ですよ。体鍛えてますね。
笑えるシーンも沢山盛り込まれて、ポップコーンやビール片手にどうぞ。 ★★★★
監督、脚本はクリストファー・マッカリー。
マジック・イン・ムーンライト [映画【ま行】]
ウディ・アレン脚本・監督の新作。
主演がコリン・ファースとエマ・ストーンとなれば観に行くしかありません。
アレン監督は色んな引き出しがあるのですが、今回はロマンチック・コメディです。
時は1928年。
ドイツのベルリンで興行中のマジシャン・スタンリー。
別名ウェイ・リング・ソー(コリン・フアース)。
中国人に扮したマジックで世界でも有名なイギリス人マジシャンです。
気難しいことでも有名なスタンリーはその日も楽屋でスタッフを叱り飛ばしていたところに、旧友のマジシャン・ハワード・バーカンが声をかけます。
ハワードはコート・ダジュールの大富豪の家に滞在中というアメリカ人霊能力者の話をします。
彼女の能力が凄すぎでトリックがどうしても暴けない、スタンリーに本物かどうかを見極めて欲しいというのです。
魔法、交霊術、占いなどを全く信じていないスタンリー。
世界一のマジシャンに解けない謎は無いとすぐにハワードとコート・ダジュールに向かいます。
でも暴こうと思っているソフィー・ベイカー(エマ・ストーン)の透視能力は驚異的でした。
次々に自分の事を言い当てられて驚いてしまうのです。
叔母の過去の恋まで透視されてしまえばもう彼女は本物の霊能力者と認めるしかありません。
やがてスタンリーは何回も会ううちに可憐なソフィーに魅了されていくのでした。
エマ・ストーンがと~っても可愛いです。
エマの何回も変わるクラシックなファッションも見どころです。
南仏の風景も綺麗。
ストーリーも、実は…という謎解きもあり、そうか、なるほど。と納得して安心して観ていられます。
でもなにか足りないような感じです。
なんだろう、ストーリーが単純過ぎるのか。
後半のコリン・フアースのセリフも長い。
ソフィーとならまだしも叔母とのセリフがとにかく長い。
つい不覚にもウトウト(ちょっとだけね)してしまいましたが、でも霊能力者とマジシャンの恋のお話って好きだわ、このアレン監督の世界にもっと居たいともと思ってしまいました。
エマは25歳、コリンは53歳。
ふたりの年齢差が気になりますが恋は魔法ですからね。 ★★★☆
マダム・イン・ニューヨーク [映画【ま行】]
インド映画です。
ポスターの似顔絵のイメージでてっきりこてこてのおばちゃんが主人公と思っていたら、ビジネスマンの妻で2人の子供の母という専業主婦・シャシ(シュリーデヴィ)の若くて美しいこと!
(この画像では泣いてますけど)最初に登場した時の彼女の笑顔の美しさにびっくりします。
こぼれんばかりの大きくて美しい眼。
日本人にない華やかな美しさです。
そんなめっちゃ美人のお母さんに『英語が出来なくてヒンディ語しか話せないお母さんなんて恥ずかしい、学校に来ないで』と強くいい放つ長女、こんな子おるんかい?
『お前なんか料理しかとりえはないんだから大人しく家にいたらいいんだ』なんて面と向かって言ってまう夫・・・・ありえない!?
そんな突っ込みを入れたくなるようなエピソードの数々、インドでの生活を描くのが前半です。
奥ゆかしい妻は夫にも娘にも一言も言い返すことなく心を痛めているばかり。
幼い息子と義母は味方なんですけど。
そんなある日、アメリカに住むシャシの実姉の娘が結婚することになってインド式結婚式の手伝いの為に家族を置いて自分だけ早めにニューヨークに行くことになります。
一人でニューヨークに行くのも乗り気じゃなかったけど姉の頼みは断れず、嫌々渡米。
でも早速ファーストフード店では英語が喋れないことで傷つく事件が起こってしまいます。
遂にシャシは「4週間で英語が話せる」という英会話学校の広告を信じ、誰にも秘密で英会話学校に通うことを決意します。
初心者クラスに入会したことで同じように英語が出来ない外国人たちと友達になって語学はメキメキ上達、学校が楽しくて仕方なくなっていきます。
でも、語学力も自信もつき始めたそんなある日、夫や子供たちが結婚式の出席の為に渡米してきます。
またインドにいた時と同じような夫の言動に怒りはつのりますがインドの妻は辛抱強く、英会話学校の卒業試験も行かないことを決意。
妻や母であることを選ぶシャシ。
そこに英会話学校の先生や友人たちが結婚式にやってきてくれて、思いがけず結婚式という大舞台でスピーチが卒業試験となってなっていくのです。
趣味で作っているインドの伝統的な甘菓子ラドゥー、美味しそうです。
インドでは夫にお菓子作りも辞めてしまえと言われたシャシですが、米国の英会話の先生に言わせると立派な起業だといわれます。
先生や同級生に認められることにより彼女は自分の魅力に気づいていくのです。
インド映画ですからきっとどこかで踊ってくれるのかしらと思っていたのですが、最後にやっぱり踊りあり。
インド女性の美しさに釘付けとなりハッピーエンドににっこりの素敵な映画でした。
日本人も英語は苦手ですからね、マダム・シャシの悩みにはとっても同情してしまいます。
4週間で英語が流暢に話せるこんなクラスがあったら是非通いたいものだと思いましたよ。 ★★★★
もらとりあむタマ子 [映画【ま行】]
元AKBの前田敦子主演です。
『リンダ リンダ リンダ』『マイ・バック・ページ』の山下敦弘監督×向井康介脚本コンビということですが、お二人の身近にこんな女の子がきっといるんでしょうね、だってとってもリアルなダメっぷりなんですもの。
お話は東京の大学を卒業はしたものの在学中に就活に失敗したのか、元々就活なんかしなかったのか・・・。
とにかくタマ子(前田敦子)は実家の甲府へ戻ってきてしかも秋、帰ってきて半年も経とうかという頃からお話が始まります。
甲府の実家は父(康すおん)が営むスポーツ店。
お客は地元の高校生や中学生という小さなお店。
タマ子は実家を手伝うどころか父親にご飯も洗濯も全部まかせてはマンガを読んでテレビゲームをしてばかり。
ニュースを観ては「ダメだな、日本は」、高校野球を観ては「こんなに暑いのによく野球なんてやってるよな」と悪態をつく。
それを聞いた父親に「ダメなのはお前だ、就活をしろ!」と言われても逆切れで「自分も考えてはいるけど、それは今じゃない!」と言い放つ。
友達はスポーツ店に買い物に来た中学生の仁(伊東清矢)だけ。
毎日ジャージー姿でゴロゴロするばかり。
そんなある日、タマ子は髪を切り、写真を撮って履歴書を書き始めるのだった。
AKB時代の事も女優になってからの彼女の映画も観ていないので余計なイメージを持たずに観れたと思います。
きっと本当の前田敦子さんはこんな女の子じゃないのでしょうけど、等身大の女の子を演じる彼女の魅力で飽きなく観ることが出来ました。
とにかくダメっぷりが凄くてお父さんが作った美味しそうな食事を両肘をついて食べる食べ方もとても汚いし、下着まで父親に洗ってもらっても何もしないの~?
灯油くらいは入れてあげようよ、なんてクスリと笑わせる演出はさすがです。
父親の気持ちとしては、きっとそのうち自分でどうにかしてくれるだろうという淡い期待。
自分の娘だからまあ仕方がないという諦め。
そしてタマ子自身が今の姿は本当の自分じゃない、本当の自分はもっと出来る子なんだけどただやる気が起きないだけなんて思っているんだろうと理解しているのですね。
季節は秋が冬になり春になり夏になり。
どうにか踏み出そうとした履歴書も空振りに終わるけど、お父さんに彼女が出来たことでタマ子は行動を起こすことになっていきます。
モラトリアムって言葉、久しぶりに聞きました。
私が教育学で習った時は確か‟青年期一時期延長”という意味だと覚えています。
大人になれない青年というようなちょっと否定的な意味で聞いた言葉です。
でもタマ子のダメっぷりを観ていると自分にもあった未来が見えずに迷った時代を思い出します。
みんな目標に向かって突き進んでいたり自分のやりたいことを見据えている人ばかりじゃないよね。
大なり小なり大人になるためには迷って迷って・・・。
大きな事件も起こらないけどあっちゃんの演技に釘付けでとても面白い映画でした。 ★★★★☆
モネ・ゲーム [映画【ま行】]
2011年制作の「モネ・ゲーム」。
2年前に観たいと思いつつ見逃していたんですけど、先々月の8月末にドイツ旅行に行くANAの飛行機の中で鑑賞することが出来ました。
『英国王のスピーチ(2010)』でアカデミー主演男優賞のコリン・ファースとキャメロン・ディアスの共演とだけ知っていたんですけどここまで思いきりのいいコメディだとは思いませんでした。
元々は1966年のシャリー・マックレーン主演の犯罪コメディー『泥棒貴族』をリメイクしたものでリメイクの脚本はコーエン兄弟です。
出演も脚本もビッグネームばかりじゃない?
場所はイギリス。
コリン・フアース演じる美術評論家はとっても意地悪な雇い主の大富豪アラン・リックマン(ハリ・ポタのスネイプ先生よ。意地悪な役がお上手です。)に腹を立てています。
積年の恨みでどうにかして彼に一泡吹かせたいと考えるコリン。
贋作の名人の友人にアランが欲しがりそうなモネの名画〝積わら”の偽物を描かせます。
〝積わら”はモネが好んで描いたテーマで収穫後の畑に積まれた干し草です。
朝や夕方、季節、天候を変えてモネが何枚も描いているので個人が所蔵しているものが発見されてもおかしくないって事でしょう。そして偽物も多いようです。
こんな絵ですけど↓↓↓(注;これは参考の本物でシカゴ美術館所蔵です)絵画収集家の憧れの作品ってとこかな。
コリンは次にアメリカに飛び、西部のカウガール・キャメロンに高額な報酬と引き換えに詐欺の仲間になってほしいと頼みイギリスに連れてきます。
アランは既に積わらを1枚所蔵しているので「モネの名作〝積わら”の本物をアメリカで見つけました、対になるように購入されたらどうですか。」と報告してここで絵の持ち主であるキャメロンが登場。
アランに贋作を売りつけがっぽり大金をせしめる・・・そんな簡単な計画だったんですけど何故かコリンの思うようには進んでいきません。
実はアランはコリンに愛想を尽かしていて(『ラブリーボーン』で犯罪者役やってた)スタンリー・トゥッチを連れてきて、「ドイツの美術館館長で優秀な評論家を雇うからお前はクビだ。〝積わら”なんかいらん。」というバッサリ。
復讐どころかいきなりクビにされちゃったコリン。
アランは可愛くて機転の利くテキサス娘のキャメロンの事はすっかり気に入ってしまって彼女とは一緒に仕事をしたい様子です。困るキャメロン。
そこに日本人の怪しい集団が仕事の取引相手にやってきて変な連中にアランは苦い顔。
すっかり計画がが狂ってしまったコリンはケチが続きます。
一流ホテルでズボンが脱げて逃げ回るなどあまりの情けない姿に大笑いです。
でも英国王だってこなしちゃうコリンです。スーツの下にパンツだけでも上品さはあるような。
さてさてコリンはアランに絵を売りつけて復讐出来るのか。
日本人を小馬鹿にした演出があるけど最後まで観ると実はね・・・狙っていたのはこっちの方なんだよっていう大どんでん返しがありますから我慢です。
でも日本人って集団で歩いて英語は喋れないし常識知らずに見られてるんでしょうね。
キャメロンのキュートなビキニ姿、アランのちょっと見たくない椅子にふんぞり返った裸姿、コリンの上品なパンツ姿などがおのおの拝めます。
ビール片手に軽いノリでDVDでご覧になってください。
この映画私はとっても面白かったんですけど、ドイツ旅行の最終日ケルン大聖堂のすぐ近くにある「ヴァルラーフ・リヒャルツ美術館」に偶然行ったらびっくり。
なんと映画に出てくるモネの〝積わら”の1枚が展示されているじゃないですか。
ANAさん、ありがとう。いい仕事してますね。
ついでに解説に一筆この美術館にも所蔵がありますよって書いてくれたらいいのに。
そんな訳で私は帰りの飛行機でももう一回鑑賞し直してしました。
スタンリー・トゥッチが「自分はケルンの美術館長だった」と自己紹介してたのでやっぱりそうか~ってそこで笑えました。
監督:マイケル・ホフマン 2011年アメリカ映画
モンスターズ・ユニバーシティ [映画【ま行】]
『モンスターズ・インク』のシリーズ第2弾です。
緑色のモンスター・マイクの大学生時代を中心に親友サリーとの出会いを描いていました。
前作が2001年なのでかなり時間が経っての続編ですね。
ドラえもんの「どこでもドア」みたいな道具を使って人間の子供の部屋に行き、寝ている子供たちを怖がらせてはその叫び声のエネルギーを集めるモンスター達。
そんなモンスターの世界に暮らすマイクは、体が小さくて可愛らしいルックス。
でもモンスターの世界だと可愛いのはマイナス要素なんです。
マイクの目標は怖がらせ屋になること。
小学生の時の授業でみた〝怖がらせ屋”に憧れ、そこから一直線に目指した名門大学「モンスターズ・ユニバーシティ」(MU)に遂に入学します。
大学で人一倍勉強をして努力する優等生のマイクでしたが、怖がらせ屋の名家出身で努力も勉強もしなくても先生や友人から認められるサリーという同級生がいました。
最初のサリーの印象は最悪。
サリーは大きな体で恐ろしい声をもっていますから誰でも簡単に怖がらせてしまいます。
理論としての勉強だけは出来るけど実技としての怖がらせ屋の才能が無いマイクとはすべての面で真逆です。
そしてやがてやってきた期末試験。
マイクとサリーは学長の大切にする記念悲鳴ボンベを壊してしまって怖がらせ学部を追放されてしまいます。
どうにか復帰したい二人は反発しあいながらも協力して危機を乗り越えていきます。
何度も危機はやってきてそのたびに努力をしていくマイク。
でも、いくら頑張ってもダメなことはある・・・というシビアな展開の今回です。
現実は甘くないのだよとディズニー映画なのに教えてくれるんです。
そういう点では仕事をしている大人の方が身につまされてじわじわとマイクに同情。
1作目を観たときに、サリーの毛並みがあまりに美しくて、うわ、これからのアニメってこんなに美しく描かれるんだ~と思った時からすでに12年。
それから今までもっと綺麗に動くアニメも体験してしまいました。
でも、主人公二人にまた会えたのは嬉しくて楽しかったです。
これから観る人で前作は観てないぞという方は予習後映画館に行った方が楽しめるんじゃないかと思います。
比べちゃうと前作の方が面白かったかなとは思いますけどこちらも子供から大人まで楽しめる映画になっていました。
最後におまけがありますから最後まで座っていてね。 ★★★★
監督;ダン・スキャンロン
本編の前にサシュカ・ウンゼルト監督の短編『ブルー・アンブレラ』が上映されます。
マリーゴールド・ホテルで会いましょう [映画【ま行】]
イギリス・アメリカ・アラブ主著国連邦合作映画です。
監督は『恋に落ちたシェイクスピア』のジョン・マッデン。
ジュディ・デンチ、ビル・ナイ、マギー・スミスなどイギリスの名優たち共演で話題の映画。
「神秘の国インドの高級リゾートホテルで、穏やかで心地よい日々を」
このホームページの謳い文句に魅かれてそれぞれの理由で集まった7人のイギリス人。
イブリン(ジュディ・デンチ=007の上司役でも有名ね)は長い間連れ添った夫を亡くし、知らなかった夫の借金を清算しインドへ。
ダグラス(ビル・ナイ)とジーン(ペネロープ・ウィルトン)夫婦は定年になって国内に家を買う予定だったが娘の仕事に出資して失敗、イギリスを諦めインドを選ぶ。
ミュリエル(マギ-・スミス=ハリポタのミネルバ・マクゴナガル先生)は股関節の手術の為に嫌々インドへ。
ノーマン(ロナルド・ピックアップ)とマッジ(セリア・イムリー)は新しいロマンスを求めて。
グレアム(トム・ウィルキンソン)は昔の知り合いを捜すため。
着いて初めて分る超おんぼろホテル。
電話も通じないしドアも無い部屋まであるし。
「HPと違うじゃない!」「すぐにお金を返して!」と迫らても若いホテルオーナーのソニー(デヴ・パテル=スラムドッグ$ミリオネア)は「HPはこれからの予想図です」「ハイ、お金はきちんと“3か月後にすぐ”返します」なんて上手くかわすから7人はそのまま暮らすしかなくて・・・。
夢のようなシニアライフは無理だと分かったところで仕事を見つける人、寺院めぐりを楽しむ人、捜している友人を訪ね歩く人とインドに前向きな3人。
新しい恋を見つけるために一生懸命な2人。
部屋から出ずに文句ばかり言ってる1人。
イギリスでもインドでも人種差別主義だったがホテルの下働きの女の子と触れ合ううちに変わっていく1人。
支配人ソニーにはかわいい恋人が。
しかし名家の娘と結婚を強いるソニー母、ホテルなんか辞めろと重圧をかけてきます。
そしてホテルの住民たちの間にも恋心が育つメンバーもいて、熱いインドでの恋はどうなっていくのか。
若い時にはわからなかったけど今ならわかることもある。
考えてる時間はないの、今実行しなくちゃ。
昔言えなかったことばが言えるのは今。
必要とされている場所があれば幸せ。
経営が怪しくなったホテルを助けてしまうのも住民の一人です。
まるでクララのようにむくむくと車いすから立ち上がりますしね。
グレアムの捜す友人は実は・・ってとこも今っぽいです。
全員が幸せになるってわけじゃありませんがそれぞれここで何かを見つけていく。
シニア世代の映画はラストは涙というものも多い中、前向きで明るいラストににっこりして席を立ちました。
★★★★
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 [映画【ま行】]
メリル・ストリープが今年度のアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞して話題となった作品です。
アカデミー賞ノミネートの常連であるメリルは今回「鉄の女」として有名なイギリス初の女性首相、
マーガレット・サッチャーを演じています。
お話は現在と過去を行ったり来たりします。
サッチャー女史にはご主人のデニス(ジム・ブロードベント)がいつも傍らにいるのですが、
実はご主人は既に亡くなっていて、現在の彼女は認知症によりその事を理解していない様子。
まるで生きているように会話し、愚痴をこぼし、意見を聞いて二人の過去を回想していきます。
ご主人と出会い、結婚し、政治家を目指していく若き日の頃は別の女優さんが演じています。
その時の記憶は二人で踊ったダンスの想い出、幼かった子供たち。
政治家として、首相として、そして認知症となった老年期と
お話は不意に移り変わっていくので解りにくいときもありますし、
イギリスの現代史、特にフォークランド紛争前後を理解していればもっと面白かったかもしれません。
黒い背広の集団の中にだだ一人水色のスーツでハイヒールのサッチャー女史。
このシーンの存在だけでも彼女の強さがうかがえます。
在任中は一国の首相として強くあり続け苦渋の判断を選び続けた彼女を陰で支えていたご主人。
そんな彼が死んでもなお、傍にいてくれるなんてなんと羨ましいと思ってしまうストーリー。
ここは創作の部分なんでしょうが、メリルの演技はこの老年期を演じることで
彼女しかこの役は演じられないだろうと思わせるほどです。
サッチャーさんが認知症であったなんて知りませんでした。
ストーリーはそれほど心躍ることもないんですがメリルの演技を観るための映画ですね。
そしてあの頃の歴史の裏舞台を垣間見せてもらえました。
監督は『マンマ・ミーア!』のフィリダ・ロイド。
アカデミー賞メイクアップ部門も最優秀賞を受賞しています。
★★★☆