孔雀 我が家の風景 [映画【か行】]
中国。12年続いた文化大革命が終わった1977年のお話。
3人の兄弟(長男・姉・次男)と両親が食卓を囲む。家の中ではなく外のベランダ。どこの家族も同じように並んで食事をとっている。これがこの頃の中国の普通の家族の普通の食事の風景なんであろう。
話は姉の物語から。自由奔放な性格のウェイホン(チャン・チンチュー)。 ビンを洗う工場で働いているが、彼女はある日落下傘で目の前に降りてきた将校に恋心を抱く。 自分も入隊を志願するが入隊は出来ず、拒食症に陥る。 そしてある日パラシュートを自分で作り自転車にくくりつけ街を走り回るという奇怪な行動をはじめる。母の悩みの種である。
そして長男。軽い知的障害を持っている。両親は長男に気づかうあまり姉と次男の不満に気づかない。 長男は全く悪気はないのだがいろいろな事件を起こす。同僚を冷凍庫に閉じ込めたり、ある日の雨の日には次男のウェイチャン(ルゥ・ユウライ)の通う学校に傘を届けに行ったことがきっかけで学校の生徒を巻き込み大騒ぎになる。
次男はその後学校でいじめを受ける。ついに嫌気をさした次男はねずみを殺す薬を兄に飲ませようとするのだが・・・・・。
クー・チャンウェイの初監督作。第55回ベルリン映画祭審査員特別賞・銀熊賞受賞作。 文化大革命が終わり時代が激変する中、田舎町に暮らすある家族の年代記を丁寧に描いています。
長女役のチャン・チンチューはとってもきれいな女優さん。中国ではポスト“チャン・ツィイー”といわれているらしい。 次男役のルゥ・ユウライは細い・・・すごく細い。折れそう。
姉、長男、次男の順番で話が進むため時間が前後してストーリーがわかりにくいところがあります。あれ?姉はお嫁に行ったんじゃなかったの?とか。 でもなんといいますか、中国のある家族の年代史、というわけですから「あの頃が家族にとって最も幸せだった」という弟の回想のナレーションとともに食卓を囲む場面に戻り、そして話は変わるので先が読めなさ過ぎで長い映画なんですけど眠くなることは全くありませんでした。
高所恐怖症の私は、長女が将校に一目ぼれしたときに即パラシュート部隊を志願するんですけど、そこには志願する少女たちがいっぱいいて驚かされました。私は飛べません。なぜ志願するのか謎です。退屈な毎日に嫌気がさしているのかもしれません。とにかく街から出たいのかも。 そんな風にとても謎なシーンが多くて、たとえばベランダで食べてるシーンからもう何故?なんです。あれは何を食べているんだろうかとか、長女の拒食症の時の家族の行動なんてもうです!でもそれで治るんだからまたすごい。
中国映画を見慣れていない私にはとっても新鮮というか・・・・ハリウッド映画やCG盛りだくさんの映画の合間に見たせいかとても面白かったのです。昔の日本もこんな感じだったのかもと懐かしささえ感じます。 時にはお互いが疎ましく思え離れてしまうがやがて寄り沿う家族。 美しい孔雀の羽を広げる姿(幸福の象徴?)を待ちわびる ある家族の姿を是非見てください。 ★★★★
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