LION/ライオン 〜25年目のただいま〜 [映画【やらわ】]
実話を元に制作された映画です。
1986年・インドの貧しい村で暮らす5歳の少年、サルー(サニー・パワール)は大好きな兄と二人で母を助けるために懸命に自分が出来ることで働いています。
それは列車に積まれた石炭を盗んではわずかな牛乳に換えたり、という危険なことまでです。
ある日兄が止めるのもきかず、兄の仕事探しにくっついていった駅で迷子になるサルー。
「ここで待っていろ」と言われたベンチではなく、停車中の 列車の中で眠り込んでしまったのです。
目覚めると無人の列車は3日ほど止まることなく走り続け、家から遠く離れたカルカッタまで来てしまいます。
サルーは家に帰りたいと思いましたが大都市カルカッタでは自分の生まれた村とは言葉が違います。
親切に声をかけてくれる人もいますがでも信じることが出来ずに逃げ出したり、浮浪児が集まった場所では大人に追いかけられることもあり、ごみをあさるような生活の果てに孤児院?のような施設に収容され、そこからオーストリアに養子として渡り、お話はそれから20年後となります。
成長したサルー(デブ・パデル)は進学して養父母と別れて暮らすことがきっかけで実の家族を探し始めます。
愛してくれる養母(ニコール・キッドマン)にはどうしても実母と会いたいとは言えなかったのでしょう。
友人からGoogleEarthならインドでも探せるんじゃないかとアドバイスされ、わずかな5歳までの記憶を頼りにとりつかれたようにパソコンで探すのですが、自分が憶えていた住所はインドにはありませんでした。
恋人(ルーニー・マーラ)も出来て、なに不自由もなく今を暮らす主人公サルー。
インドのスラム街よりオーストラリアの生活の方が何倍も幸せじゃないのか?
なぜ昔の家族を憑りつかれたように探すのか?
映画を観る前は誰しもそう思うところなんですけど、前半のサルー少年が育ったインドでのシーンがかなり丁寧に語られているので納得です。
5歳のサルーはいつも「よくやった、お前は偉い」と褒めてくれる兄の事が好きで好きでたまらない。
優しく頼りなさげな母もきっと突然いなくなった息子を今も探し続けているはずだ。
過去の自分や兄の姿がフラッシュバックように蘇ってくるのです。
アカデミー賞に作品賞、助演男優賞(デブ・パデル)、助演女優賞(ニコール・キッドマン)、脚色賞、撮影賞、作曲賞にノミネート。
受賞は出来なかったんですがニコール・キッドマンの今回の演技は素晴らしかったです。
ニコール・キッドマン自身も養子を迎え、実子もいて、代理母で娘も育てているという環境。
今回は自分の子どもは産まずに不幸なインドの子どもを養子に迎えて幸せを与えるという選択をしたオーストラリア人女性を自然体で演じています。
デブ・パデルの映画は「スラムドック$ミリオネア」、「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」、「チャッピー」などで観てきましたが、今回の映画で初めてかっこいい♪って思ってしまいました。
インドの方って顔のパーツが大きくて綺麗ですよね。
少年時代を演じた5歳のサニー・パワールくんの演技も素晴らしく、お兄ちゃん役の少年の切ない目も忘れ難く、インドの貧困、孤児の子供を売って生活しているんじゃないかと思われる大人たちもいることなどなど、様々なことを考えさせられてしまいました。
〝成長した貴方を本当のお母さんにも見せてあげたい。”
ラストに本人映像と「ライオン」というタイトルの真相がわかるのでエンドロールまでご覧になってください。
監督:ガース・ディビス
ラ・ラ・ランド [映画【やらわ】]
本年度・第89回アカデミー賞でのごたごたは前回書いた通りですが、作品賞誤報トラブルのニュースも宣伝となり、やはりその後の注目度ナンバーワンはこの映画。
『タイタニック』『イヴの総て』と並び、史上最多14部門でのノミネート。
監督賞・主演女優賞・撮影賞・作曲賞・歌曲賞・美術賞の6部門を受賞しました。
冒頭の渋滞した高速道路でのミュージカルシーンは素晴らしいですね。
朝の大渋滞でいらいらしながら止まっている車から一人の女性が歌い出し、やがて次々にドライバー達が降りて踊りながら歌い出す。
ワンカットでカメラが長回しで撮ってます。
ダンサーもカメラマンも何度も練習しての名場面なんでしょう。
ここから一気にミュージカルの世界に入り込みます。
ストーリーはハリウッドのワーナーブラザーズのカフェで女優になるためにバイトをするミア(エマ・ストーン)と、いつか自分のジャズの店をもつことが夢のピアニストのセバスチャン(デミアン・チャゼル)、ふたりの恋物語。
この日は渋滞に巻き込まれながらもオーディションのセリフを覚えようと必死のミア、その後ろを運転していたセバスチャン。
ふたりはこの高速道路で初めて出会うのだけれど最初の印象は最悪。
次はクリスマスの夜、この日もオーディションに落ちたミアが通りを歩いていると聞こえてくるピアノの調べ。
曲に導かれてバーに入るミア。
このシーンも、高速道路のシーンも最後の伏線になっていきます。
ミアが店に入ると、この曲を弾いたばかりに店をクビになってしまったセバスチャンがいます。
話しかけようとするミアを無視して、セバスチャンは去っていきます。
やがて冬から季節は春、次の再会場所はプールサイド。
日暮れの街を背にふたりが躍るシーンへとつながります。
マジックアワーと呼ばれる日が落ちる美しい瞬間を踊るふたり。
長いことかかってやっとここから恋に落ちていくのですが、監督は『シェルブールの雨傘』など往年の美しくも悲しいラブストーリーになぞってストーリーを展開してますからね、長くは続かない幸せです。
ジャズの店を持つ夢のために意思を曲げて加入したバンドが売れ出したセバスチャン。
一方が売れ始めるとふたりは会う時間も少なくなり、ミアは自分の才能に自信を失くしていきます。
自分で脚本も書いた一人芝居をやって経済的にも大失敗をしたミア、もう女優の夢を諦めると言いだすのです。
でも結果、この一人芝居が彼女の人生を変えていくのですが、その後、時は一気に5年後となります。
この映画の監督のデミアン・チャゼルが好きな映画の一つというミュージカル映画の『シェルブールの雨傘』。
16歳の美しい少女は恋をして将来を約束した青年がいます。
でも彼は突然軍隊に入ることとなり「2年後に帰ってくる」と言い残して去ってしまいます。
愛した彼が去って泣き暮らす少女。
そこに少女に求愛をするリッチな男性が現れ、少女は悩みながらもその男性と結婚し街を出ます。
やがて2年後に戻った青年は彼女がいなくなったことに驚き哀しみますが、別の女性と結婚。
時は経ち何年も過ぎたクリスマスイヴ。
偶然青年が経営するガソリンスタンドにお客として現れる元少女。
彼女は裕福層そうで、お互いに子供もいます。
ふたりはそのまま、本当の別れをするのです。
これが王道ラブストーリー。
そんな悲恋を現代的にアレンジして、美しい映像で空も飛ぶしね。
夢を持つ素晴らしさ、恋、挫折、別れ、再会などを盛り込ませています。
『セッション』を観た時になんて若いすごい感覚の監督が出てきたぞとびっくりしましたが、今回はそれよりも毒が抜けたというのか落ち着いた映画で、本来はこの映画を撮りたかったということでした。
『セッション』といい、『ラ・ラ・ランド』といい音楽はハーバード大学時代のルームメイトのジャスティン・ハーウィットが担当、今回、監督賞と共に作曲賞と歌曲賞の同時受賞となりました。
レヴェナント 蘇えりし者 [映画【やらわ】]
アメリカでは有名な実話で小説にも映画やTVドラマにもなった、ちっちゃい子でも知っているお話なのだそうです。
アメリカの西部開拓時代に生きた罠猟師、ヒュー・グラスにレオナルド・ディカプリオ。
見事アカデミー賞主演男優賞受賞です。
復讐劇ではありますが、2時間半の映画、実は過酷なサバイバルシーンがほとんどです。
1823年・アメリカの北西部、極寒の荒野で狩猟をしては毛皮を採取するハンターチームはネイティブアメリカンのある種族に襲われ、船で川を渡り逃げだします。
弓矢で攻撃され大勢の犠牲者を出し、さらに執拗に命を狙われ追われるハンターチーム。
やがて船を捨て山越えで追手を避けて逃げますが、道に詳しいガイドのヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)がクマに出会い瀕死の重傷を負ってしまいます。
グラスの怪我をみて、もう長く生きられないと思った隊長のアンドリュー・ヘンリー(ドーナル・グリーソン)は一緒に逃げるのは無理だと判断します。
グラスを死ぬまで見届け、手厚く埋葬もしてくれるなら報酬を出すと隊員に話すとグラスの息子のホーク(フォレスト・グッドラック)と若いジム・ブリッジャー(ウィル・ポールター)が一緒に残るといい、報酬金目当てでフィッツジェラルド(トム・ハーディ)が名乗りをあげます。
ハンターチームが去った後、フィッツジェラルドはまだ息があるグラスをさっさと殺して埋めようとしますがそれを止めに入った息子のホークを先に殺してしまいます。
息子が殺される様子を見ながらも身動きが出来ないグラス。
ホークを殺した後、グラスを土に生き埋めにしたフィッツジェラルドは、ブリッジャーを連れて逃げ出します。
置き去りにされたグラスは息子の復讐を誓い、土から這い出します。
やがて折れた足を引きずり這いながら極寒の地でフィッツジェラルドを追いかけはじめるのです。
グラスはネイティブアメリカンの妻がいましたが、息子が小さい頃に白人に殺されるというシーンが何度も回想で出てきます。現在の息子は成長していてポスターに描かれているかわいい男の子は思い出のシーンの一コマでした。
グラスはクマに喉も食い破られるのでそれからはセリフも少なめ、背中も腹も傷だらけ。
クマはCGらしいのですがクマの息がカメラにかかって白くなるというシーンがあってその細かさに驚かされます。
クマに襲われるシーンはすごく怖くてけっこう長めです。
ついでにいうと毛皮の狩猟チームなので最初っから皮を剥がれた動物たちがごろんごろん出てきますのでこういう生々しいシーンが苦手な人は要注意の映画です。
土から這い出した後は荒野で食べものを探し、追手から極寒の川に逃げたり、丸太に掴まって流されたり、血が滴る動物の生肉に食らいつき、川から取った魚をそのまま丸かじりする・・・よくディカプリオもこの仕事うけたよね、ベジタリアンなんだってね・・・と思って口が半開きになって観てしまいました。
こりゃアカデミー賞主演主演男優賞もらわないと。
この映画で監督のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督は昨年の「バードマン」に続き2年連続でアカデミー賞監督賞を受賞するという偉業を達成。2年連続なんて正直びっくりでした。
でも撮影賞のエマニュエル・ルベツキはなんと3年連続の受賞ですからね、もうものすごいスタッフ揃いの映画な訳です。
ルベツキは前回は継ぎ目がないような撮影スタイルで話題になりましたが、今回は厳しい氷の大自然の風景をみせてくれます。
空の色もなんともいえないくらい美しく、1日のうちに数時間しかないマジックアワーと呼ばれる黄昏時にこだわった結果とのこと。
撮影はカナダで行われたそうですが、こだわった撮影スタイルで長引いた結果雪がなくなって、季節が反対の南米に移動して撮影が続けられたので9か月もかかったのだといいます。
そしてその自然の前には絶えず苦痛で顔が歪むディカプリオのアップです。
レオは首を絞められ、水に沈められ、ナイフで刺され、クマに食われ、体中から血を流し、口からは泡を吹いてますからもう痛そうで寒そうで。
死んだ馬の内臓をナイフで取り出してその中に入り、馬の腹から顔を出す、この寒さから身を守るシーンは夢に出てきそうなインパクトです。
坂本龍一の音楽が苦しくなるくらい追い詰められた感で迫ってきて素晴らしかったです。
でももうこんな苦しい映画は2回は観たくないなというのが正直の感想です。
白人たちのネイティブアメリカンたちに行った非情な歴史もしっかり描かれていて胸が痛みました。★★★★
リップヴァンウィンクルの花嫁 [映画【やらわ】]
岩井俊二監督作品で、BSスカパーで6話のストーリーと、それとは別の完結で映画、になっているそうです。
TV版の1話だけを無料放送で観たのですがとても不思議なお話。
ネットでなんでも買えちゃう時代。ネットで人がつながると思いたい時代。
映画も観てみたくなり映画館へ駆け込みました。今週の金曜までで終了しそうだったので・・・。
黒木華さんってすごく綺麗な女優さんだけど、お姫様役より品のいいお手伝いさんのほうが似合うって感じがしますよね。
この映画は岩井監督が黒木さんのために書いた脚本のようですけど、後半メイド服で豪邸の掃除や家事をする黒木さん。
やっぱり監督もそう思うのかな。
あ、でもウエディングドレス姿も2回見せてくれます。
ストーリーは、2016年、派遣教師の七海(黒木華)はネットのお見合いサイトで知り合った鉄也(地曳豪) との結婚を決める。しかし彼に七海は小さな嘘をたくさんついている。
親が離婚していること、本当は仕事はクビになってしまったこと。
さらに結婚式で自分側の親戚の数を水増しするために、ネットで知り合った安室(綾野剛)という男に代理出席を頼んでいること。
その嘘はなぜかすべて鉄也の母親(原日出子)にばれており、さらに浮気の濡れ衣も着せられ、今までついていた嘘のせいで言い訳も出来ないまますぐに離婚となってしまう。
鉄也と住む家を追い出され、実家にも帰れず、仕事もない七海はどこにも行く当てがなく泊まっていた安ホテルで働きだす。
そこにまた安室からの電話がかかってくるのだった。
七海が頼りにする安室という男、いい人そうで、そうでもない。
自称、俳優。そしてなんでも屋。
頼まれれば子供の相手もするし、結婚式の親戚の調達も、お金さえもらえば若い夫婦を離婚させる事もする・・・そう、七海の離婚も実は安室が鉄也の母から依頼されて行ったお仕事の一つ。
子離れしていない鉄也の母は七海の事が嫌いで罠をしかけて離婚させたのだけど、安室は自分が仕掛け人だということは言わず彼女を心配するかの如くつかず離れずフォローしていく。
(なんで鉄也の母の依頼も七海の依頼も都合よく全部安室が請け負うのかっていうのが無理がある設定の様な気もする。)
安室の仕事っぷりはそつがなく、きめ細やかで、悪事は悟られず、七海にはその後お弁当を差し入れしたり、仕事を紹介したり。
七海のことが好きなのかと思ってみてたら、実は危険な仕事をやらせていたり。
嫌な奴だとは思っていたけど最後にはあきれ果ててしまいます。
そんなあやしい男に綾野剛さんは本当にぴったり。
中盤、安室の依頼で自分の結婚式でも頼んだ代理出席、結婚式の親戚役のバイトを引き受けることになる七海。
「この結婚式の新郎さ、実は妻帯者なんだって」と、とんでも情報をそっと教えてくれる姉役の里中真白(Cocco)。
真白との出会いで七海の運命はまた変わっていく、というより別の世界に連れていかれてしまうんですが、真白の母役があのシンガーソングライターのりりィだったなんてエンドロールで知ってこれまたびっくりでした。
りりィさんって私が知らないだけで実はたくさんドラマや映画にも出演されてたんですね。
で、タイトルの「リップヴァンウインクル」って何のこと?
映画館のカウンターで間違えずに言えるのかドキドキしちゃいましたよ。
岩井監督の家のご近所にあるアパレルメーカーの名前から取ったそうですけど、その元々は19世紀に発表された短編小説のタイトルでもありその小説の主人公の名前でもあるのだそう。そうか、人の名前だったのか、ってなっとく。
小人に森の奥に誘われて酒を飲み、やがて眠ってしまったリップ・ヴァン・ウインクルという男。
目が覚めたら20年の時間が経ってしまっていたというアメリカ版浦島太郎のようなお話。
映画『野獣死すべし』で松田優作さんが刑事の室田日出夫さんに銃を突きつける時にこのお話しをしたとかで優作ファンには有名なんだそうです。(松田優作は目をぐわって見開いて話してるから超怖い。)
時代遅れの人、眠ってばかりいる人という意味もあるようですね。
Cocco演じる真白と共に都会の豪邸という竜宮城に迷い込んでいく七海。
七海は毒を持つ魚がうようよの竜宮城から無事に現在に戻れるのでしょうか。
この映画、かなり長い、3時間です。
七海の生徒の女子高生も、鉄也の母も、一見優しそうに見えて実は意地悪な人がたくさん出てきます。
主人公があまりにふわふわしてて人を疑うことを知らない人なのでAVに売られちゃうんじゃないか、殺されちゃうんじゃないかと最後まで心配でしょうがなかったですね。
でも予想がつかない展開が面白かったです。TV版も続きがみたいなあ。 ★★★★
ルーム [映画【やらわ】]
エマ・ドナヒューの小説『部屋』が原作です。
原作では5歳の男の子の目線で語られていくようです。
高校生だったジョイ(ブリー・ラーソン)はある日、見知らぬ男の納屋に連れ込まれそのまま閉じ込められ、そこで7年間監禁されていました。
その間男の子も出産、息子の5歳の誕生日をこの狭い部屋で迎えていました。
息子のジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)と二人で見上げる天窓。
薄暗い部屋のドアは外からカギがかけられ出ることは出来ません。
ふたりの毎日は軽い運動をしたり、TVを観たり。
時々犯人のオールド・ニックがやって来る恐怖の日々。
でもやがて二人は脱出を試みます。
犯人も捕まり、ジョイの実家に帰りもう安心かと思われた脱出のあと、ここからがまた新たな二人の戦いが始まるのでした。
監禁された部屋で一人で出産!そして子育て?
考えただけで恐ろしい状況。
5歳の誕生日を迎える息子ジャックに自分の出来る限りの知識を与える若き母親。
ジャックの存在がジョイの生き甲斐になっているというシーンです。
そのジャックを手放すことになるかもしれない脱出劇・・・息子が死んだと犯人に嘘をつき外に出させて助けを呼ぶ・・・は身を切られるような大きな賭けだった訳です。
しかしジョイはそうやってつかんだ自由<外の世界>に押しつぶされそうになるとは思いもしなかったわけで、すっかり変わってしまった監禁前と今との現実に戸惑い、やがてマスコミが押し掛け身動きが取れません。
事件の被害者に優しくない世間のあり方にジョイの精神は病んでいくのです。
映画では息子の母への愛で立ち直っていく様子で終わりますが、こんなに可愛いジャックがやがてもっと大きくなったその時にまた新たな壁は現れるんだろうと思わずにはいられませんでした。
ジェイコブくんの可愛さが主演男優賞ものです。
お母さん役のブリー・ラーソンが今回みごとアカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞しましたけどそれを助けたジェイコブくんの力は大きいと思います。
監督;レニー・アブラハムソン
同じような事件の報道には胸が痛みます。
こんな想いは誰にも起こってほしくないと願わずにはいられない映画でした。
リリーのすべて [映画【やらわ】]
「ヘイトフル・エイト」は観客が男性ばかりだったんですが、この映画の観客は女性ばかり。
そりゃ、英国男子俳優で超人気のエディ・レッドメインが主演ですもんね。
エディ・レッドメインは昨年は「博士と彼女のセオリー」で難病のホーキンス博士を見事に演じてオスカー獲得。
で、今回は世界で初の性転換手術をした男性を演じるなんて・・・攻めてきますよね~。
もう、まったく守りに入っていません。
と、いうのもこの映画の脚本がエディに渡ったのは「レ・ミゼラブル」(12)の頃だったそうです。
この映画も「レ・ミゼラブル」の監督のトム・フーバー監督なんですが、レミゼでマリウスを演じている時に今作の出演を打診されて、脚本を読んですぐにやりたいと伝えて、その後4年経ってますけど途中「博士・・・」でオスカー受賞して、オスカー受賞作の次回作としての公開になったらしいです。
お話は1926年頃のデンマーク・コペンハーゲン。
画家のアイナー・ベイナー(エディ・レッドメイン)は妻で肖像画家のゲルダ(アシリア・ビカンダー)と暮らしていました。
彼が描くのは物悲しい荒涼とした風景の絵。
画家として認められ人気もあったのですが、妻のゲルダの方は今一つテーマに詰まっていました。
そこでゲルダは夫に人物画のモデルになってもらいます。
夫に女装させて女性の肖像画を描くのです。
そうしているうちにアイナーは自分の中に眠るもう一つの自分に気づいてしまう。
少しづつ少しづつ、妻にも内緒で女性としての時間が増えるアイナー。
やがてアイナーは女として生きたい、本来の性を取り戻したいと願い始めるのです。
エディ・レッドメインは男性としてはかなり細い方だと思うんですがやっぱり女装したら、ごつい。
口もデカいし肩も広い。
でも所作がどんどん女性になっていきます。
女装させた旦那を連れてパーティに出かけるゲルダ。
「旦那の従姉妹のリリーなの」、と紹介するけどデカすぎない?これバレちゃうでしょ?と、私的にはこんなとこでドキドキ。
でもそれがバレないんだな、不思議に。
ばれないどころか逆にイケメンたちの熱い視線を感じてドギマギするリリー。
そこで出会ったベン・ウイショー演じるヘンリクにキスをされた時には鼻血がぶわーっと出ちゃうの。
あの瞬間はアイナーが死に、リリーが体に定着した瞬間かと思われます。
悪いもんが出ちゃうと言うのか、もう男には戻れないって感じでしょうか。
ベン・ウィショー、彼もイケメン英国男子、「007」のQ役でも人気でホントに最近見る映画にはよくよく出てるけど今回も脇役ですごい存在感。
英国イケメン俳優同士のラブシーン、フーバー監督も攻める攻める。
ヘンリクはリリーが女性じゃないって見抜いているのに「貴女はアイナーだよね?」って言ってキスするんですね。
つまりヘンリクはゲイなんですけど、リリーの方は女性としてヘンリクに恋をするんです。
で、その後いろいろあってかなり時間も経ってから女性になる手術をしたのちに、またリリーはヘンリクに会いに行きます。
でも彼はゲイですからね、女性じゃなくて男性が好き。
「え、君、本当の女性になったの?」だって。
うわ、そうきたか。
まったく恋はままならぬものです。
ところで一方、旦那に「私女になりたい!」と言われた妻はどうしたもんだか。
演じるのは「コードネームU.N.C.L.E」で可愛いヒロインを演じてたアシリア・ビカンダー。
この演技で今年のアカデミー賞助演女優賞を受賞しちゃったんだからすごい。
「コードネーム・・・」で観た時はお人形のように綺麗な女の子だったけど、ここではドンと大きくみえるのが不思議。
やっぱりこのエディ・レッドメインとの夫婦演技合戦に勝ち抜くためには気合がいるんでしょう。
最初は妻は「私が女装させたから?」って驚くんだけど、実は小さい頃からそんなことがあって幼馴染の男の子にキスされたことがあるんだとか告白されちゃうのね。
結果、ゲルダはリリーをモデルにした絵でパリで画家として認められるわけで、逆に夫は全く描けなくなっちゃう。
でも「私は画家になりたいんじゃない、女になりたいの」って言われちゃうとね、元夫の願いをかなえてあげるしかないじゃない。
たとえ夫が男とチューしてるのをみてびっくりポンだったとしてもです。
さて、この時代、リリーのような人は精神病院に入れられちゃうんです。
そこでドイツの医師が性転換手術をやってみない?って言いだします。
でもこれが前例のない手術でもあり命をかけての手術なんですよ。
今すぐ女になりたい、手術したいと自分のことでいっぱいの元夫をガッツリ支える妻、ゲルダのなんと男前なこと。
でも、じゃあ私は?私だって夫が必要なのよってちょっと弱くなる時に流す涙とかもあって、なかなかぐっときてお見事でした。
ラストはかなり切ないです。
80年前の実際にあったことが元になってます。 実物は40代だったらしいのですけど。★★★★
ラブ&ピース [映画【やらわ】]
ロックミュージシャンになる夢を諦めた鈴木良一(長谷川博己)は今はしがないサラリーマン。
しかも職場では毎日「小学生か?」と思われるようないじめにあう辛い毎日。
でも職場の同僚・寺島裕子(麻生久美子)だけは優しく接してくれるので彼女には憧れを抱いている。
もちろん話しかけることも出来ないのだが。
そんなある日、鈴木がデパートの屋上で買ったのは小さいミドリガメ。
ピカドンと名付けてそれはそれは可愛がっていたのに、同僚に笑われたというだけでトイレに流してしまう。
すぐにピカドンを捨てたことを後悔する鈴木だったがもう遅い。
一方、ピカドンはトイレから下水道を通って下水の地下に住む謎の老人(西田敏行)のところへ流れ着く。
そこは壊れたおもちゃや捨てられた動物たちと老人とが仲良く住む世界だった。
捨てられてもなお、鈴木が好きでたまらないピカドンは、やがて鈴木をロックスターへと導いていくこととなるのだが…。
『地獄でなぜ悪い』で主演の長谷川博己と園子温監督の再タッグです。
今回も園監督独得の世界が広がってました。
エログロ抜きということで、ミドリガメは巨大化して怪獣に、長谷川博己さんは金髪のロックスターになっていきます。
謎の老人・西田敏行さんの正体は実は・・・・・・・なんですけどね、長谷川さんとは別のお話の進行になっていましてそこはトイストーリーの世界ようなのです。
監督が25年前に書いた脚本でファンタジーコメディだそうでびっくりするくらいすべてが古い感じ。
長谷川さんが歌うあの曲でのコンサートも熱狂出来るのか謎です。
反戦も訴えてるそうですが、でも亀にピカドンってネーミングはいかがなものか。
途中で出ようかとも思ったけれど最後まで座ってたら、終わった途端、隣に座っていた人が笑い出しました。まあ、笑うしかないか。
園監督は今は何本も撮ってて、昔作りたかった思い出の映画も撮れるようになったんだな~。
売れっ子になるってすごいことなんだな~。
そう思って帰りました。
ヒロインの麻生さん、もうちょっと可愛く撮ってもらえたらよかったのにね。 ★★
ワン チャンス [映画【やらわ】]
英国の人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」で「誰も寝てはならぬ」を歌いあげて優勝。
一躍世界的オペラ歌手になったポール・ポッツの実話です。
願っていればいつか夢はかなう・・・と思いたいのですが現実はままなりません。
子供のころになりたかった人になれる人はどのくらいいるのでしょう。
ポール(ジェームズ・コーデン)はイギリスの田舎の普通の家庭に生まれ、少し太目で内気な少年。
でも歌うことが大好きでオペラに夢中、寝ても覚めても音楽と一緒に成長していくのですが、成人した時、彼の職業は携帯ショップの店員でした。
小さい時からいじめられて育った彼は自分に自信が持てません。
歌の才能はあっても踏み出せないポール。
でもそんな彼に携帯ショップの上司の友情、素敵な彼女の存在、母の息子を信じる愛情が徐々に夢へ近づくチャンスを与えていきます。
音楽の事は疎い私なのでオペラはさっぱりです。
でも映画に出てくる観客も私と同じで、何を始めるのかわからないポールの扮装や容姿に最初は笑うんですけど、彼の歌を聞いた瞬間からその才能に拍手を惜しみません。
いいものって心で感じるものなんですね。
もちろん、その成功を掴むまでは長い月日が必要。
ポールは彼女に励まされ奮起。
イタリアに単身勉強に行きますが実力が発揮できずに帰国、また携帯ショップで働き始めます。
うまいこといきそうなときには必ず不幸が重なってしまうポール。
その不幸の連続がコミカルに描かれるんですが実話らしいのす。
成功するには本人の才能と努力は勿論必要だけど、周りの人たちの支えと愛も必要だと教えてくれる映画。
それにしても出会いって大切ですね。ポールは奥さんと出会ったのが一番の幸福。
今、夢を追いかけてる人には観て欲しい映画。
そしてそんな人が傍にいる人にも見て欲しいです。
信じて応援したくなっちゃいますから。
ちょっぴり可笑しくてラストにほろりでした。 ★★★★
主人公ポールを演じるジェームズ・コーデンはブロードウェイの舞台に立ちボイストレーニングを積んで自ら歌唱することを希望したらしいのですが、映画での歌唱はポール・ホッツ本人の声に吹き替えられています。
監督は「プラダを着た悪魔」のデビッド・フランケル
私のオオカミ少年 [映画【やらわ】]
韓国映画です。
観たかった映画の前の時間に上映されていたことと、評判があまりに高く「泣ける」「切ない」・・・などなど好レビューが多い映画だったので観ちゃいました。
韓国で700万人超動員の大ヒットを記録した純愛映画だとのこと。
「オオカミ少年」とは「嘘つき少年」の事ではなく「狼男」のこと、“X-メン”で言うとウルヴァリンですね。
アメリカで暮らす韓国系移民家族の元に電話が入ることから物語は始まります。
祖母のスニはその電話の後、急いで韓国に戻ることになります。
韓国には47年前のスニが住んだ田舎の家が今も残っていました。
お話は過去に戻ります。
47年前というと朝鮮戦争休戦後10年ほど過ぎたころです。
病弱で心を閉ざした少女スニ(パク・ボヨン)は母(チャン・ヨンナム)と妹と一緒にその家に引っ越してきますが、そこにはある少年が密かに住みついていました。
母によってチョルス(ソン・ジュンギ)と名付けられることになったその少年は言葉も理解できず、喋れず、人間らしい日常生活も出来ない・・・まるで捨てられた犬のような少年。
最初は戦争孤児なのかと思って保護する家族。
小犬の躾のように「待て」や「良し」から教えていくうちに情も湧いてきて、段々と言葉は喋れなくても人間らしく変わっていくチョルス。
でも怒りを感じた時、チョルスにある変化が起こるのを目撃してしまいます。
実はチョルスは軍の人間兵器を研究開発していたある博士の人間兵器だったという事実がわかってしまうのです。
ドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」や映画「塵も積もればロマンス」などで人気のソン・ジュンギが主演でオオカミ少年を演じています。
ヒロイン、スニには映画「過速スキャンダル」のパク・ボヨン。
「過速スキャンダル」でもそうでしたが今回も歌を歌います。
歌うシーンが多いので彼女は元々歌手なのかしら?と思ったけどそうじゃないみたいですね。
言葉も喋れず、理解も出来ず、産まれてから一切人間らしい扱いを受けてこなかったと思われる少年が、自分に初めて優しくしてくれるスニに淡い恋心を抱く・・・というものですが、何故今まで放置されていたとかの説明が全く無く、世話好きという理由だけでチョルスを保護するスニの母にも疑問を抱きつつ進んでいく前半。
体の弱い娘が危険な目に合っていてもお人よしだからって平然としているのは不自然ですよね。
当初は戸惑っていたスニも犬のように頭を撫でたらなついてくるチョルスに愛情を感じ始めたころ事件が起こります。
大家の息子がこれでもかとチョルスをいじめ倒すんです。
なのでチョルスは怒りで超人ハルクのように変身してもじゃもじゃのオオカミと化すのです。(巨大化はしません)
ラストは号泣と聞いていたのですけど・・・これはファンタジーと理解するといいのかしら。
かなり放置状態での結末です。
毒々しいストーリーも多い韓国映画の中では珍しい純愛物語ですが犬は捨てて終わり、でも私を想ってくれてありがとう、可哀想だから泣いてねとばかりのラストはちょっと残念でした。
なぜ博士にも少女にも何年も放って置かれるのか、いつまでこんなことが続くのか。
そして彼の今後はどうなっていくのか。
視点を変えると「グリーンマイル」のようなラストでした。
主演のソン・ジュンギファンなら号泣かな。 ★★★
監督・脚本;チョ・ソンヒ
リンカーン [映画【やらわ】]
第85回アカデミー賞では最多12部門でノミネート。
主演のダニエル・デイ=ルイスがアカデミー主演男優賞を受賞し話題になりました。
受賞スピーチはユーモアも交えた余裕の溢れたものでした。さすが3回目の受賞。
また、美術賞も受賞しています。
アメリカで最も人気のある大統領として名前があがるリンカーン大統領の再選1865年から暗殺で亡くなるまでのストーリーです。
2011年の「マリリン 7日間の恋」では実父の顔を知らないマリリン・モンローがベットサイドにリンカーン大統領の写真を父の写真として飾っているエピソードも語られていました。
この映画、スピルバーグ監督のいつもの娯楽作品と思ってはいけません。
ポスターに書かれた衝撃的感動作っていうのも鵜呑みにしてはいけません。
映画館では寝てしまう人も多数おります。いびきが聞こえました。
私はアメリカ史に詳しくないのでリンカーンについて予習して、念のためブラックコーヒーも持って行きました。^.^;
南北戦争での悲惨な血みどろの戦いが初めに描かれ、すぐに舞台は議会に移ります。
そこでは奴隷解放派の共和党と奴隷解放反対派の民主党が激しい議論を重ねています。
4年も続く南北戦争は死傷者を増し、議会では終結案も出ていますがリンカーン大統領(ダニエル・デイ=ルイス)はこの機に合衆国憲法修正第13条を下院議会で通過させたいという悲願のため、目的のためには嘘も裏工作も重ね、南北戦争をも終わらせません。
一番のクライマックスは投票シーンで各州議員の名前が一人一人呼ばれ、賛成か反対かをコールしていきます。
前半の長い脅しや説得なのど裏工作の様子を観ているのでどちらを選ぶのか本当にドキドキします。
リンカーン大統領の南部出身の妻を演じるのはサリー・フィールド。
大学生の長男にジョセフ・ゴードン=レヴィット。
共和党の奴隷解放急進派にトミー・リー・ジョーンズという名優揃い。
リンカーンと言えば「人民の人民による人民の為の・・・」という名演説、そして奴隷解放宣言。
でも映画でも語られますがリンカーン自身は本来奴隷解放論者ではなかったようですね。
黒人の為っていうよりアメリカの為の政策で、なにがなんでも成立させるぞという信念を持った人達によって作られていく歴史。
その歴史を刻む役目を終えた人は消え去る定めなのでしょうか。
リンカーン大統領が劇場で撃たれるという暗殺シーンは次男が悲報を聞いて驚くシーンとして描かれます。
それは南北戦勝終結後、わずか5日めのことでした。
★★★★
日本なら江戸時代末期、14代将軍徳川家茂の頃です。