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カティンの森 [映画【か行】]

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今年最初の映画はポーランド映画。第80回アカデミー外国語賞ノミネート作品。

監督・脚本は『灰とダイヤモンド』のアンジェイ・ワイダ監督、81歳の作品、第80回アカデミー外国語賞ノミネート。

ワイダ監督の父はこの『カティンの森』虐殺事件の被害者であるという。カティンの森事件とはソ連国内のグニェズドヴォ村近くの森で約4400人のポーランド軍将校捕虜・国境警備員・警官・聖職者たちがソ連の秘密警察によって銃殺された事件で日本ではカチン事件として知られている。この映画を撮ることは監督の悲願だったのではないかと思う内容で、観終わった時は重い鉛でも飲み込んだような気分になったがこの戦争を実際に体験したワイダ監督の想いが伝わってくる。

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時は1939年、ドイツはポーランドに侵攻、第二次大戦が勃発した。その数ヶ月後、ソ連はポーランドの東部に侵攻した。この物語でも 西と東からそれぞれやってくる沢山のポーランドの難民がブク川陸橋で鉢合わせになる。お互い今来た道を「危険だから戻れ!」と言い合うのだが片方はドイツ、もう片方はソ連軍に追われているのだ。西にも東にも逃げ場がないポーランド市民たち。

その難民の中にクラクフから自転車で娘のニコを連れたアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)がいた。夫であるアンジェイ大佐(アルトゥル・ジミイェフスキ)を探しているのだが、逆の方向に逃げる車の中には夫の上司である大将婦人ルシャ(ダヌタ・ステンカ)がいた。ルシャは車の中からアンナを呼び止め、クラフクに戻るように勧めるが聞き入れないアンナ。

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アンナはやがてソ連軍に連行される寸前の夫と再会、夫にこのまま逃亡する事を勧めるが国と軍に忠誠を誓う夫は他の将校たちと一緒に収容所に送られていく。          

アンジェイ大佐は自分に起こる事を手帳に日記として書き記していく。やがてこの日記は夫の友人であるイェジ(アンジェイ・ヒラ)の命の犠牲で家族のもとに届けられる事になるのだがその内容が解るのはラスト。

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それまでは戦争映画らしい銃撃戦も一切なく、忍びよる死の影におびえながらも将校の誇りを捨てずに収容所生活を送るアンジェイ大佐達、夫や父・兄を待ちながら暮らすポーランドの女たちの生活と戦後の様子が続いていく。そしてあるものは未来がないポーランドを受け入れ、あるものは真実の為に戦おうとするのだが。

アンナの願いもむなしくアンジェイ大佐達はは銃殺されていた。それはまるで家畜のように銃殺専門の兵士、流れた血をバケツで流す兵士、遺体を運ぶ兵士、埋める兵士という分業で行われる惨殺シーン。

ソ連が行ったこのポーランド将校惨殺事件はやがて敗戦国となるドイツ軍の仕業であったとすり替えられていく。戦争は終わってもポーランドはソ連の衛星国となったため、大戦から生き残った軍人や国民、遺族達は事件の真相に触れることはタブーとなる。(ソ連がそのことを認めるのは1990年、ゴルバチョフ政権の時代まで長く封印され続ける。)

 

アンナの甥で美術学校を志す青年が後半出てくるが、彼との運命とは違うけれど、きっとこの青年はワイダ監督自身なんだと思った。 ★★★★☆

 


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コメント 4

non_0101

こんにちは。
今年最初がこの作品とは、また凄い作品を選びましたね~
決して忘れられないようなシーンが多過ぎて
今、思い出しても胸が痛みます(T_T)
でも、観てこの事実を知ることが出来て良かったと感じる作品でした☆
by non_0101 (2010-01-17 21:48) 

キキ

non_0101さん、こんにちは。

ここまで重い映画だとは思っていなかったんで
ズシンと暗くなりながら帰宅しました。
脚本も書いているワイダ監督は長い間
この事件を画像にして世界に伝えたいと思っていたんでしょうね。
ポーランドが背負った長い長い苦難の道。
映画の評価が高いせいか会場は空いている席がない位
いっぱいでした。
by キキ (2010-01-18 20:09) 

キキ

クローヴさん、こんにちは。
niceありがとうございます。
by キキ (2010-01-31 23:32) 

キキ

みなみーさん、こんにちは。
niceをありがとうございます。

by キキ (2010-02-01 18:27) 

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