SSブログ

わが母の記 [映画【やらわ】]

340543view001.jpg

GWに観てきました。
実は私はあまり映画館で邦画は観ないんですが予告を観て劇場で観たくなった作品です。
この映画は文豪・井上靖氏が実母・八重について書いた晩年の短編三部作、『花の下』、『月光』、『雪の面』を元に映画化したものです。
私も義母が2月に亡くなったので母親を語る映画が観たかったのだと思います。
ちょっとネタバレで感想書きます。

340543view003.jpg

昭和39年から主人公の母が認知症を発症し亡くなるまでの10年間のお話。
小説家・伊上洪作(役所広司)は東京に住んでいるが、実家の伊豆に住む父が病死したころから実母八重(樹木希林)の様子がおかしくなり始める。

幼少期に実母と離れて暮らした為に“自分は母に捨てられた”という想いを今も引きずる洪作。
それまでは母との関係に距離を置いていた洪作であったが、恨みがいくら深くても息子の顔さえ忘れてしまった母にもはや恨みごとも言えはしない。

しかし今まで聞けなかった「何故自分を捨てて曽祖父の妾で自分とは血の繋がらないおぬいばあさんに預けたのか」を素直に母に尋ねることが出来るようになるのである。

340543view005.jpg

樹木希林対役所耕司の演技が迫ってくる映画でした。

老女役を若いころから演じてきた希林さんは今や演じる役と実年齢が合致して、見事の一言。
目の前にいる息子、洪作に語る少し頓珍漢な話や悪態に劇場からは何回も笑い声が湧きあがりました。

340543view006.jpg

洪作は売れっ子小説家であり東京の家には妻子の他、仕事関係の編集者や運転手などの使用人が常にいて騒がしい。
小説のネタに私生活を書かれてしまう事で末娘の琴子(宮崎あおい)などは父親に反発している。
八重の誕生日にはホテルで大家族のお食事会と楽団の演奏。

そんな伊上家の暮らしを描きながら八重と洪作という母子の関係だけではなく洪作と琴子という父と娘の親子関係も同時に丁寧に語られていきます。

340543view009.jpg

八重の暮らしは伊豆に住んでいたり息子の住む東京にきたり、軽井沢の別荘に行ったり。
面倒を見てくれるのも孫の琴子であったり洪作の姉妹であったりで、今のようなせかせかした時間の流れで一人で親の認知症と向かい合っているのではなく、大家族の中で世話が出来る人が八重を世話していています。
使用人もいるので観る前に想像していたような悲痛な展開ではありませんでした。
経済的な心配も無く、家族にこんなに大切にされる老後は羨ましいとさえ思ったりもしました。
何かを絶えず捜し回っている本人にはわからないようでしたが。

340543view004.jpg

それにしても子供の頃の記憶とは実際のところどれだけ正確なんでしょう。
母が子供を捨てるなんてよほどのことがないと思うのですが洪作の記憶ではそうなってしまって他の考えは受け付けない。
なので後半で明かされる母が胸に秘めていた想いが自分が老年期になるまでわからない。
妻も母から聞いていた幼少期の事実はご主人には明かしていないしね。
小説家というものは少し不幸を背負ってるくらいがいいものが書けるのかもしれません。

340543view002.jpg

やっと母の想いを知ることができた時、母は自分を息子とはわからなくなってしまっている。
でも幼いころに書いた本人が思い出せないでいる詩を認知症が進んだ母がすらすらと口にするシーンは泣けますね。
母の息子への愛がにじみ出て、息子の心にあった恨みが消え去る瞬間でした。

  ★★★★

監督、脚本は「クライマーズ・ハイ」の原田眞人。
井上靖氏には息子さんがいますが、監督はあえて洪作の子供たちを女の子だけにしたらしいです。

第35回モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門、審査員特別グランプリ受賞作品。


nice!(7)  コメント(10)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 7

コメント 10

月夜のうずのしゅげ

この映画を見に行ってよかったです。
by 月夜のうずのしゅげ (2012-05-14 05:55) 

キキ

月夜のうずのしゅげさん、こんにちは。
母の日に観に行く人も多かったようですね。
井上靖さんの小説やエッセイも読みたくなりました。
by キキ (2012-05-14 20:31) 

coco030705

こんばんは。
けっこう評判がよさそうな映画ですよね。役者がそろっている感じがします。親子って色々あるんですよね。観てみたい気がします。

お姑さん亡くなられたんですね。ご冥福をお祈りします。やはり寂しいですね。
by coco030705 (2012-05-14 22:28) 

キキ

coco030705さん、こんにちは。
GWに百日忌でした。
それでという訳ではないですが観てきました。
樹木希林さんの演技がすごいですね。
淡々とした映画なんですけど日本映画ならではの映画でした。
by キキ (2012-05-17 20:55) 

キキ

タッチおじさん、niceありがとうございます。
by キキ (2012-05-17 20:56) 

キキ

thisisajinさん、niceありがとうございます。

by キキ (2012-05-17 20:59) 

non_0101

家族のことを考えさせられる作品でしたね。
そして、樹木希林さんの演技は凄かったですね~
冗談でサッチャーより上みたいに言っていたのですけど、本当に別次元でした。
景色も美しくて、こういう映画を劇場で観ることができて良かったと思うような作品でした☆
by non_0101 (2012-05-18 00:09) 

キキ

non_0101さん、こんにちは。
上質の日本映画ですよね。
樹木希林さんと役所耕司さんの掛合いに笑ったり
泣かされたりしました。
景色も美しかったですし、静かな音楽も良かったです。
by キキ (2012-05-18 07:16) 

キキ

クローヴさん、niceありがとうございます。
by キキ (2012-05-26 20:02) 

キキ

ようよさん、niceありがとうございます。

by キキ (2012-05-31 00:16) 

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。