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硫黄島からの手紙 ★★★★☆ [映画【あ行】]

監督;クリント・イーストウッド  主演;渡辺謙 二宮和也 伊原剛志 加瀬亮 中村獅童

「父親たちの星条旗」に続く作品。前作同様、戦争の善悪や勝ち負けを論じるものではなく、そこで戦争が行われたという真実が語られています。                                            ただ敗戦国側なので悲惨さは今回さらに壮絶でした。                                                                       敵に撃たれるのはもちろん、飢えや病気とも闘って日本人だけでも2万1千人の兵士がこの小さな島で戦死しているそうです。

                                                                                            この時代に生きた若者達は自分が望む訳でもないのにお国の為に命を捧げなければならない。赤紙が来たり上官に命令されれば、親も妻も子供も全てを残して戦地に向かわねばならず、食料も水も兵器すらも無くても突撃と言われれば突撃し、玉砕せよと命令されれば天皇陛下バンザイと叫んで自決せねばならない。靖国でまた会おうと願いながら手榴弾を自分のヘルメットに当て爆発するのを待つ。体が吹き飛ぶ。それを見てまた一人が手榴弾を手にしていく・・・。

すこし前までは戦争から帰ってきた元日本兵が身近にいて、戦争の話を直に聴く事もあったのでしょうが 戦後61年の今、この悲惨な事実を知る機会は映画やTVや本になってしまっています。                                                                                そういうことを考えると嵐の二宮くんがこの映画に出演している事は年齢の層を広げる意味でも良かったと思います。彼を観たくて映画館に足を運ぶ人が多いと聴きます。                                                                            二宮くんは妻とお腹の子供を残して出征する大宮でパン屋を営む青年。(奥さん役には裕木奈江。久しぶりに会いました。)妻やお腹の子供に自分は必ず生きて帰ると約束しています。加瀬くんは犬を殺せなかった為に戦地に送られる元憲兵役。

渡辺謙演じる栗林中将もとても存在感があり、彼はすっかりハリウッドスターなんだなあと思いました。井原剛志が演じるバロン西も好演でした。乗馬競技でオリンピック優勝をした実在の人物を演じています。                                                         アメリカ兵のサムのポケットにあったサムの母からの手紙を日本兵の前で西が読み聞かせることで アメリカ人も日本人も同じ人間なんだと思い知らされます。栗原と西の2人はアメリカに住んでいた事があり、英語も話せる人格も素晴らしい思いやりのある上官です。                                                中村獅童演じる兵士は命令をきかない気に入らない兵隊は日本刀で首をはねてしまうという本当に嫌らしい人なんですが 私が想像する日本兵の上官のイメージはこちらです。

アメリカ側からの「父親たちの星条旗」に続き、硫黄島での戦いを日本人側から描いたこの作品はほとんどを日本人の俳優で、そして日本語で、という素晴らしいものでした。                        日本語だけで行われる演技を日本語を話せない監督はどういう気持ちで撮っているのかが不思議なくらいでした。                                                                                           でもイーストウッド監督は 自分はもう日本映画の監督だ、といい 良い演技は言葉が分からなくても伝わるものだと語っています。                                                 役者出身の監督らしく役者の意見も聞き入れ採用し、映画を組み立てていったようです。                  この映画では敵として戦っていた日本と米が力を合わせてを作った事が素晴らしく、両方の国の兵士達に敬意をはらっていることが伝わってきます。                                     米では今はイラクの問題もあり、戦後61年の日本とは戦争への意識が違うのでしょう。                   日本人でさえ忘れてしまっていた(知らなった)過去を米の監督から見せてもらったことに感謝です。 

2部作ではありますが、二つの映画でそれぞれの作品の俳優が一緒に演技する事は無かったようです。でもリンクしている場面があり やはりどちらも観ていたほうが楽しめそうです。                                                          私はもう一度観に行きたいと思っています。


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しまうま

 こんばんは。

 『父親たちの星条旗』がどっちかというと無名の俳優をメインに起用していたのに対して、『硫黄島からの手紙』は日本では知られた顔の俳優がメインだったので、日本側の映画も無名の俳優をメインに撮ったらどうだったかな、とか思いました。
 渡辺謙はうまいんだけど、日本人の目で見ると、上手すぎというか、想像ですが、当時の日本人を演じているにしてはオーバーアクション気味かな? とか思えたりして。

 戦闘シーンは凄まじかったですね。タカ派、超保守的な発言で知られる石原都知事が硫黄島での撮影を許可したそうですけど、都知事はこの映画を見てどんな感想を抱いたんでしょうね。
by しまうま (2006-12-16 00:18) 

キキ

しまうまさん。ありがとうございます。
監督は渡辺謙の「ラストサムライ」や「SAYURI」を見て依頼したようですね。日本人で無名で演技力があって英語が話せる俳優を探すのは至難の業なのかもですよ。無名でなくても「SAYURI」では日本人女優は主役をもらえませんでしたし。
私は謙さんはとても良かったと思います。それと井原剛志も素敵でした。
知事は・・・そうですね。感想聞きたいです。
by キキ (2006-12-16 13:52) 

丹下段平

遅ればせながら観てきました。本当に凄い作品でしたね。日本の俳優の素晴らしさも再確認できました。クリント・イーストウッドは現在世界一の監督だと思います。
by 丹下段平 (2006-12-30 03:40) 

キキ

段平さん。あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。
ほんと良い映画でした。
今年もイーストウッドの監督した映画を観たいですね。
by キキ (2007-01-03 12:24) 

Hiji-kata

この記事 読ませて頂きました。
とても共感できる内容に、
楽しく映画を追体験出来ました。
これからも よろしくです。
by Hiji-kata (2007-01-14 05:50) 

キキ

土方さん。はじめまして。
こちらこそ、どうぞ宜しくお願いいたします。

土方さんの記事はとても勉強になります。
私も黒澤明の大フアンです。
by キキ (2007-01-14 12:55) 

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