闇の列車、光の旅 [映画【やらわ】]
ホンジュラス共和国から父と叔父と共にアメリカ、ニュージャージーに移民として密入国を試みる少女サイラ(パウリナ・ガイタン)。メキシコから出る列車の屋根の上に乗り込み、命がけの旅が始まる。
そんな密入国者を狙って列車に乗り込んでくる3人のメキシコの少年ギャング。サイラはギャングのリーダーに金品を奪われるだけではなく、襲われそうになってしまう。
危うい所で救ってくれたのは同じギャングであるはずのカスペル(エドガール・フローレス)だった。実はリーダーに恋人を殺されたいきさつがカスペルを動かしたのだが、結果リーダーを殺してしまったカスペルはギャング団から追われ、密入国車達との列車で逃避行を余儀なくされる。
命の恩人に淡い恋心が芽生えるサイラ。しかし、組織はどこまでも追いかけてくる事を誰よりも知るカルぺル。サイラを助けたのは助ける事が出来ず死んでしまった恋人の替わりであっただけで彼には生きる希望すら残ってはいない。いつ殺されるのか、その時を待っているのだ。
追いかけてくるメキシコのギャング団、ストリートギャングの怖さが前半、丁寧に描かれます。
自分たちの所属を示すタトゥーを体に顔に入れて組織に忠誠を示す少年たち、そうやって自分の身を守るしかないかのように。
入団するにはまず、殴って蹴られて、それに耐えた者に手作りであろうパイプ銃で抗争相手を殺させる、そんな非情な力と掟で縛り付けられた集団・・・。広範囲に広がる組織からカスペルに逃げる手段は見つかるのか。
そして「ここ(ホンジュラス)に未来などない」と言ったサイラの叔父や父の運命は?
カスペルくん、モテモテです。彼女が殺された訳も彼女の幼い嫉妬心からだし、サイラも父や叔父を捨てて列車をこっそり降りた彼を追いかけます。死んでしまっているカスペルくんの彼女はすごく可愛い子ですがあんなにタトゥーだらけの彼がギャングだって気付かないわけじゃないでしょうし、サイラだって今は命がけの旅のはずなのに?と思わない訳でもないんですがまぁ、これが乙女の恋心なんでしょうか。
少し前にみた北朝鮮の脱北を描いた韓国映画『クロッシング』の「豊かな国にしか神はいないのか!」という悲痛な叫びは見えず、残酷なラストに違いはありませんが涙はこみあげることはありませんでした。ただ普通の幼い子供たちが平気で犯罪に手をそめていくストーリーが切ないです。
アメリカに行けば希望はあるのか、それは分かりませんけど中南米のある現実をみた映画でした。
監督;ケイリー・ジョージ・フクナガ ★★★★
ラブリーボーン [映画【やらわ】]
ピーター・ジャクソン監督作品が大好きな私。前から楽しみにしていた映画です。
ジャクソン監督の代表作と言えば『ロード・オブ・ザ・リング』。その3部作の完結編である「王の帰還」は、03年度のアカデミー賞で作品、監督賞を含む全11部門にノミネートされ、その全てを受賞するという偉業を成し遂げ、『ベン・ハー』『タイタニック』に並ぶアカデミー史上最多タイ記録を作りました。その後ジャクソン監督は自身の念願であった『キング・コング』(05)のリメイクを完成させています。
『キング・コング』は映画館にいく途中で交通事故にあってしまって当然劇場には辿りつけず、その後DVDで観ました。映画館で観たかった作品です。
それで今回のこの作品ですが、上記作品を期待していくと失敗です、趣が全く違います。
70年代のお話で、14歳で殺されてしまった少女が主人公。この監督と言わず、今まで観たどんな映画とも似てない、違う感じ。予告編では“きっと私にもなにか出来るはず”と言ってましたが『ゴースト』のような奇跡は起きません。
映画にありがちの都合のよいすっきりした結末でも、死者からの犯人に対する報復とか、社会的な制裁も、少女が起こす奇跡で犯人を捕まえる事もありません。むしろ実際に家族や知人がこんな殺人事件に巻き込まれたら?と思うといたたまれなくなるような辛いお話なんです。
それは怖い話・・・ある日、近所に住む普通に見える異常者の男にトウモロコシ畑に用意周到に準備された場所で命を奪われてしまうスージー(シアーシャ・ローナン)。両想いの男の子との初デートの約束も果たされず、愛する両親や妹弟とももう会う事は出来ない。行方不明となったスージーは遺体さえ発見されず、残されるのは母が編んだ毛糸の帽子とそれに付いた大量の血液のみ。警察も犯人を突き止めることが出来ません。
残された人たちが心配で天国に行く事が出来ないスージー。天国と現世の間の世界が不思議な美しさのVFXで広がっていきます。
キャストが豪華でスージーの父に『ディパーテッド』(06)でアカデミー助演男優賞にノミネートのマーク・ウォールバーグ。
母に『ハムナプトラ・1』(99)『2』(01)、そして『ナイロビの蜂』(05)でアカデミー賞助演女優賞のレイチェル・ワイズ。70年代の話なんでマーク・ウォールバーグの髪型が長いのかな?
犯人の男にスタンリー・トゥッチ。『プラダを着た悪魔』に出てました。それと米国リメイクの『Shall We Dance? ~シャル・ウィ・ダンス?~』で竹中直人の役だった人って言えば「ああ」って思いだす?
最近は米ドラマ『ER13』と『14』でER部長もやってました。(役名;モレッティ)
今回の猟奇殺人犯人役は巧すぎて不気味。
主人公のスージーには『つぐない』(07)のシアーシャ・ローナン。前回よりかなり成長してるし、髪の色も髪型も違うけど彼女の水色の眼は本当に綺麗で、まさに美少女。これからどんな女優さんに成長するのか楽しみです。
原題は「愛すべき骨たち」。アリス・シーボルトのベストセラー小説「ラブリー・ボーン」は全世界30か国以上で1,000万部以上を売り上げているらしいです。
すっきりした結末を望む方には絶対不向きな映画。
冒頭の「スノーボールの中で佇むペンギンは寂しくないんだよ」と父がスージーに教えるシーン、霊界の案内人のような子との共通点とは?など複数の伏線があちこちに散らばっていて、単館系映画が好きな私は良くできた深い映画だと思いました。
★★★★
現実にさよならする時に必要なものは、好きな男の子との思い出。
エンドロールがめちゃ長いです。これほどの人が関わるVFXって大変な作業なんですね。
私の中のあなた [映画【やらわ】]
久しぶりに某映画館での試写会が当たったので友人を誘って観てきました。
お話は、白血病の幼い娘ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)に適合するドナーに困ったサラ(キャメロン・ディアス)は医者に勧められてアナに臓器を提供するドナーとして二女アナ(アビゲイル・ブレスリン)を出産する。ケイトの兄も両親もケイトのドナーとしては不適合だったためと、適合する人を見つける時間がケイトには無いと判断したためだ。
こうやって遺伝子操作によって生まれたアナも11歳。何度も姉の治療の為に自分の体を犠牲にしてきたがそんなある日、アナは両親を相手に自分の体を守るため腎臓の提供を拒否する訴訟を起こす。腎臓を移植しないと姉は生きられないと知っていても。
キャメロン・ディアスは仕事も妻としても他の兄妹への母としての姿をも捨ててひたすら長女の命を守る強い母親役が似合ってました。初の母親役です。両親を訴える次女役を『リトル・ミス・サンシャイン』の天才子役アビゲイル・ブレスリンちゃん。すらりとした手足ですっかり大きくなってました。
自分が遺伝子操作で産まれてきたことを知っている娘が両親を訴えるという医療問題の絡んだ深刻なドラマかと思っていたんですが、これがいい方に裏切られて家族の愛のお話に仕上がっていました。家族みんながそれぞれに家族の事を想い、何が出来るのかを考えている。ラスト近くは女性が多い試写会だったのですすり泣く声が多数。
子役のアビゲイルちゃんも上手いんですが姉役のソフィア・ヴァジリーヴァちゃんがかなりの名演。白血病役なので髪と眉も剃っての演技なんですがなんとも可愛らしいんです。病気でも前向きな姿や恋をする乙女なシーンに涙腺も緩みます。
途中キャメロン・ディアスがケイトの為に自分の髪をバリカンで剃ってスキンヘッドになるシーンがあってびっくりしました。でも時間が映画の中でかなり前後するのでそれがどのあたりの事になるのか、がちょっとわかりにくかったです。
そうそう、この試写会で 長い間映画を観てきた私ですが初めての体験しました。なんと映写機の不具合で音声が途中まで出てこなかったんです。出ていなかったのは一部の音声や音楽、なので友人はこんな映画なんだろうって思っていたらしいんですけど、台詞の声が全く無くて字幕だから読みとれるんですけど・・・・これはあまりにひどいんじゃ?と思っていたら係の人が登場して映画は中止しました。怒って係の人に怒鳴ってるおじさんもいました。
それから機械を調整して途切れた場所からの上映開始となりましたが、きっと次の映画の時間の都合もあったせいかと理解しましたしタダで見せてもらってるんですから文句を言っちゃ申し訳ないですよね。とにかくアナが弁護士の所に弁護を頼みに行くあたりまで音声無しという珍しい体験付き試写会でした。
原作はアメリカの人気作家ジョディ・ピコーのベストセラー小説。
監督は『きみに読む物語』のニック・カサヴェテス。 ★★★★
レスラー [映画【やらわ】]
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞、ゴールデン・グローブ賞男優賞(ドラマ)受賞、アカデミー賞主演男優賞ノミネート・助演女優賞ノミネート。
聖人にも悪人にも老いはやってくる。誰にでも等しく公平に。
私も2月のアカデミー賞受賞式にはミッキーの変貌ぶりにびっくりした一人です。
ミッキー主演で思い出すのは『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(1985)。
チャイナタウンを舞台に、新勢力を広げるチャイニーズ・マフィアの若きボス(ジョン・ローン)と一匹狼の刑事(ミッキー・ローク)の戦いを描く映画でした。
端正な顔のままのイメージで止まってるので今回の映画をみると全くの別人、レスラー体型に驚きます。
2005年のロバート・ロドリゲス監督『シン・シティ』でもごっつくなってるなって感じだったけど画面がモノクロだったり、主演が有名男優が多かったのと、アメコミの世界だったのでそれほどの想いは無かったんですけどね。
これはミッキーとは信じて無かったのかな。
先日亡くなったマイケル・ジャクソンは50歳。
ミッキー・ロークは確か52歳。
80年代に20代で一番美しかった時代を過ごし、そのイメージが今も残っている。
この映画の主人公のランディもかつては人気を極めたレスラー時代を過ごしたが、今は人気も落ち目、収入もアルバイトでスーパーの裏作業を手伝わないと食べていけない。
でもリングに上がるために白髪交じりの髪を常にブロンドに染め直し、日焼けサロンに通い肌は健康的に黒く(靴下は脱いで欲しかった)、筋肉をつけるためのトレーニングも怠らない。
たとえ住む場所の家賃が払えなくて中に入れてもらえなくても。
そんなある日、試合が終わったあと気分が悪くなったランディは緊急手術で入院。
長い間常用していたステロイドの副作用のために心臓発作を起こてしまったのだ。
医者には「もう一度リングに上がったら死ぬ」と言われ悩むランディ。
想いをよせるストリッパーのキャシディ(マリサ・トメイ)に、疎遠のひとり娘(エヴァン・レイチェル・ウッド)に連絡をしてみたらと勧められる。
こんなお父さんがいたら困りますよね。
散々放ったらかされて、病気になった会いたいと言われて、約束したらすっぽかされる。
恋人になって欲しいと言われても困ります。
ランディは会うときは傷だらけ、どこかに血を滲ませています。
ストリッパーをしていてもそれは幼い子供を育てるための必死な仕事で、いつかは子供のためにもっと環境のいい場所に移りたいと思っているのに。
ストリッパーに扮したマリサ・トメイ。
アカデミー助演女優賞にノミネートされていました。納得の体当たりの演技です。
一度はリングを捨て、娘や恋人との穏やかな生活、スーパーの総菜やで働く普通の暮らしを試みるが不器用な彼にはそれが出来ない。
レスラーというプライドも捨てられない。
リングに上がる前には控室で脚や腕に丁寧にテーピングをして傷や痛い部分を隠すランディ。
心臓手術の際に切り裂かれたウェアーを手にする彼の寂しそうな後姿は印象的。
実際のプロレスラーの指導を受けたという試合シーンでカッターの刃で自分の額を傷つけ血を流したり、相手とホチキス?を体に打ちつけ合い流血するのを観るのは痛々しくて女性には理解不能な世界。
なんでそこまで・・・って思ってしまうけどこれがプロレスというショービジネスなんですね。
敵とはちゃんと打ち合わせをして筋書きを描き、試合中は小声で声をかけ合い、試合が終わった後は良くやったと肩を抱き合う姿には微笑んでします。
総ては声援を送るファンのため演じるのです。
ランディが時々見せる笑顔に昔の面影が忍ばれ、あ、やっぱり彼はミッキー・ロークだ、なんて思いつつ完全復活を確信しました。
★★★★
監督;ダーレン・アロノフスキー 脚本;ロバート・シーゲル
レッドクリフ Part II —未来への最終決戦— [映画【やらわ】]
レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで [映画【やらわ】]
レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットとキャシー・ベイツ。『タイタニック』の主要メンバーが三人も集まると嬉しい限りなんですが、帰りはどよ~んとなってしまいました。(>_<)
封切の次の日の日曜日に観たので席はいっぱい。ポップコーンを持ったカップルもかなりいましたが途中から砂を咬んでるような味になちゃったんじゃないかなぁ?
これから観る方、『タイタニック』の続きを意識してきたら駄目ですよ。これから結婚する方、結婚は忍耐です。そしてこの映画は一緒に観ないようにね。
監督は『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞受賞のサム・メンデス。そういえば『アメリカン・・・』の時も帰りにどよ~んとしましたっけ。言わずと知れた主演のケイト・ウィンスレットのご主人でもあります。でもお二人は仕事を一緒にしたのは今回が初めてなんだとか。
ところでディカプリオって何歳になったんだろう・・・?って調べてみたら34歳でした。『タイタニック』の時は23歳。“レオ様”って呼び方も最近聞かなくなりましたよね。貫禄ついたしね。
少し前に『ワールド・オブ・ライズ』も観てきたんですけど、傷だらけになりながら中東のテロ組織に潜入するCIA捜査官を熱演してました。(↓ こんな感じ) 中東情勢が詳しくない私は興味深かったです。
話は戻って、この映画の舞台は1950年代のアメリカ。コネチカット州の郊外の可愛い白い家でフランク(レオ)とエイプリル(ケイト)は二人は子供にも恵まれ、幸せに暮らしています。でもエイプリルは女優になりたかった夢が忘れられず、幸せであるはずの専業主婦の生活に疑問を持っているんです。
フランクは普通のサラリーマン。家からは車で出かけ、途中から電車に乗り換え会社に通う毎日。その姿は日本の通勤風景の様。彼は仕事には情熱が無く、会社の女の子と浮気をすることも。でも奥さんには誠実であろうとしています。妻が落ち込んでるときは自分なりに励ましますが、それが逆効果でかえって怒らせちゃったりもするようです。そして二人は時の流れと共に少しずつ心が通わなくなっていることを感じています。
そんな生活を変えたくて妻は『今の家を売ってお金を作り、フランクが昔暮らしたいと願っていたパリで暮らす』という提案をします。
このまま好きでもない仕事を続け妻とうまくいかなくなるよりも・・・と、夫も快く承諾して、夫は会社に辞表をだし、妻はパリ行きの切符を揃え、家は売りに出し、友達や同僚にはパリに引っ越すことを伝えます。それは無謀に見えて運命を良い方に変える選択。しかし想像していた未来とは違った歯車が回り始めるのです。
ケイトは現実的で意思を貫く強い妻を熱演。そのすさまじさには圧倒されます。
お腹の子供が大きな運命の鍵となっていくのですが、二人いるはずの息子と娘は友達の誕生パーティに出かけていたり、友達の家に預けられていたりと存在感が無かったのが不思議でした。いくら夢があっても、今の生活に不満を感じていても、目の前にいる子供が可愛いと思わない母はいないと思うのです。パリに行く理由が女優になりたいからでもありませんでしたしね。
ラスト。不動産やのキャシー・ベイツの声とその夫の顔で終わりますが・・・・難解。さすがサム・メンデス監督です。奥さんの言うことはまともに聞かないほうがお互いの幸せだという暗示?かな。
それにしても二人の演技はあまりにリアル。好き嫌いが分かれますが演技は素晴らしかったです。人生にはいくつか選ばねばならない選択があります。その選択を間違ってしまった夫婦のお話。(サブタイトルだと燃え尽きた?)
『タイタニック』と全く違ったドラマを見せてもらえますが、いつか、みんなの期待通りのストーリーを観せてもらいたいですよね。 ★★★☆
容疑者Xの献身 [映画【やらわ】]
フジTV系ドラマの映画化です。テレビドラマの映画化はほとんど観ないのですが、評判がよかったので行ってみました。
TV版は・・・・・2007年10月15日から12月17日までフジテレビ系列の「月9」で放映された『ガリレオ』。『美女か野獣』以来、4年半ぶりのドラマ出演も話題となった福山雅治主演で全10話。
原作は東野圭吾の探偵ガリレオシリーズの短編集第1作『探偵ガリレオ』と『予知夢』がドラマ化されたもの。
福山雅治演じる湯川学は、感情に流されず徹底した合理主義者の天才物理学者。周囲からは「ガリレオ先生」と呼ばれる帝都大学の准教授で、「どんな些細なことにでも、必ず理由はある」をモットーに、柴咲扮する新人刑事の内海薫がもたらす難事件を、次々と解決してゆく・・・というもの。
で、今回の映画は同じ東野圭吾の直木賞にも輝いた『容疑者Xの献身』が原作で、TVドラマ化する時に映画化も決まっていたということが他のフジテレビ系のドラマから映画化したのとは違うのだという。まずはドラマ。そして映画、という順番で同じ監督の西谷弘監督が担当。
もちろんドラマは大ヒット。でも映画はドラマを観てない人でも楽しめるようになっています。今回の映画化で福山は映画初主演。(ちょっと意外)
ストーリーなんですが映画のタイトル通り、容疑者X(=堤真一)の“献身”のお話です。石神(堤真一)は湯川(福山)の大学時代の同級生。そして湯川がただ一人の天才と認める男。卒業以来の偶然の再会に喜ぶ湯川、しかし石神の心中は?
実は石神は隣の家の殺人事件にたまたま気づき、密かに恋する美しき隣人(松雪泰子)と娘の為にアリバイ工作をしていたのだ。
湯川は女性刑事・内海(柴崎コウ)と友人であり刑事の草薙(北村一輝)に協力してこの殺人事件を調べていた。次第に湯川は石神が事件に絡んでいることに気づいていく。石神の完璧なアリバイを崩せるのか?
天才物理学者×天才数学者。堤さんの役は天才数学者で冴えない高校教師。容姿的にはかなりイマイチ・・・っていう設定らしいですが、そこは堤さんなのでいくら野暮ったくしてもマフラーで顔をぐるぐる巻きにしてみてもかっこよさは消えないんですね~。それにしてもどアップになった福山雅治サンがあまりに美しいのでびっくり。眉のラインがなんとも素敵。美しい、実に美しい。
余談ですが「福山に会いたい!」という友達と、10月11日の舞台挨拶付鑑賞会のチケットを取ろうということになり、当日券発売日(10月4日)に友人がコンビニのチケット発券機で機械操作と携帯電話を同時に駆使しながら頑張ってくれたんですが、発売時間の10時と同時に『完売』の文字が出て買えなかったそうです。
同じ場所に福山さんのファンクラブの人もいて、「ファンクラブ会員でも取れなかったからここで買えたらと思って来たのに。」という話を聞いて「それじゃ仕方がない」って納得して自転車をこいで帰ったらしいんですが、すごい人気なんだな~って改めて感心させられました。
犯人を確信していても言い出せない、証明不能な「愛」や「友情」に振り回される湯川。でも主役は石神の方。暖かい、好きな人に捧げる無償の愛。謎解きのミステリーは良く出来ていました、だまされましたよ。堤さんの演技はすごく良かったです。
ただ石神が人生に絶望していた過程が説明不足だったので彼の献身の強い想いが伝わり難かったですね。う~ん、こんな方法よりもっと良い方法があっんじゃないのかな?と思わせてしまうのが残念。
直木賞の原作は読んでいないので読んでみたいと思っております。
「手紙」も原作と映画は印象が違ったので楽しみです。 ★★★☆
落下の王国 [映画【やらわ】]
原題は[THE FALL] 落下するお話。 時は1915年のアメリカ。
家業のオレンジの収穫を手伝っているときに木から“落ちて”しまい左腕を骨折、病院に入院中。笑うと前歯が無いの。乳歯が生え変わっている頃なのね。
アレクサンドリアはおぼえたての文字で手紙を書くと2階の窓から看護師エヴリンに手紙を落とします。するとその手紙は大好きなエヴリンにではなく、下の階に入院していたロイの元に舞い“落ちて”しまいます。それがアレクサンドリアとロイとの出会い。
映画の撮影中に橋から“落ちて”入院中。大怪我をしてベットから動けません。
ロイはある目的の為にアレクサンドリアに自分の創作物語、「愛と復讐の叙事詩」を語り始めます。
アレクサンドリアが目を閉じると星空が・・・海が・・・空が・・・美しい孤島に幽閉される5人の戦士の物語へと変わっていきます。
怪我をした青年が5歳の少女に語るお話の背景は世界各地の文化遺産。ため息が出るほど素敵な夢のような美しさ。プラハ、インド、パリ、ドイツ、バリ・・・・。
中でもインドのニコバル諸島で撮られた島を脱出するときの象が海を渡るシーンはかなり印象的。
象って上手に泳ぐんですね。私たちはそれを下から覗くことが出来るのです。ここでは残念ながらお見せできないので映画館で観てくださいね。
ターセム監督はインドの出身。ジェニファー・ロペス主演の『ザ・セル』(00)で監督デビュー。
元々はCMの世界で第一線の売れっ子デレクターで、この映画を撮りたいと願って構想26年。
その間にCMの仕事で世界各地を回り、ロケーションのカタログが出来上がっていったそうです。
壮大な風景に負けない眩い衣装デザインは日本人の石岡瑛子(第65回アカデミー賞コスチュームデザイン賞受賞)さん。姫が登場するときのコスチュームは扇を使っていて日本的。
5人の戦士の中のダーウィンの衣装はまるでダーウィンが追い求める蝶。
元々はロイが作ったお話ですし、アレクサンドリアの頭の中の想像でもありますから、5人の戦士のリーダーの黒山賊はロイ(あるときはアレクサンドリアのパパ)、蝶と生き物を愛する戦士・赤い衣装のダーウィンは病院の職員、黄色い衣装の爆弾を使う男はロイのお見舞いにやってくる片足の友人俳優、病院に氷を配達する男は奴隷の戦士。
姫も看護師のエヴリンだったり、現実の世界と物語の世界の登場人物は重なり合います。
アレクサンドリアに優しくしてくれる入れ歯の老人でさえ実は意外な重要人物だったのには唸りましたよ。アレクサンドリア同様、お話に夢中になってしまった私。
二人が入院している病院もとっても美しくて、でも病院特有のちょっと怖い場所でもあり、壁に映る馬の影でさえも興味深く見え、氷を見つけたらなめてしまう少女の~子供の心~に少しの時間ですが戻れるのです。
オレンジの木から落ちたのに、再び病院でも棚から落ちてしまうアレクサンドリア。
落ちることが仕事のスタントマンのロイの後悔の涙。
やがてロイの作った寓話がアレクサンドリアも加わった二人の物語に変わっていき、二人の人生も再生していきます。
カティンカ・アンタルーちゃんが可愛いくってとっても自然な演技と涙には感動です。
彼女はルーマニアの女の子で、英語が使えない故にフアンタジーの世界と現実の世界をつないでくれると監督に見出され、彼女の勘違いまでシナリオに生かされたのだそう。ヒントは「E」と「3」。
ラストはアレクサンドリアの回想で、スタントマンのロイがどこかに隠れている?白黒の無声映画です。貴方にはロイが見えますか?
映画を愛する監督さんなんだなって思いつつ・・・観終わったと同時にこの美しい世界にもう1回初めから浸りたくなる作品でした。 ★★★★☆
闇の子供たち [映画【やらわ】]
ある程度の覚悟をもって観に行きましたが、思った以上に表現も具体的なので観るのは辛いかったです。
象使いがいる田舎の村から親に金を渡すと人買業者は縫ぐるみを抱いた子供を車に乗せる。
やがて檻に入れられた子供たちは虐待、売春させられ、病気になれば生きたまま黒いゴミ袋に入れられゴミ収集車に捨てられる。他の生ごみと一緒に。
運よく健康に生きながらえても臓器提供者として選ばれれば生きたまま手術台に乗せられ、心臓を抜かれ殺されてしまう運命が待っている。
その闇を作るのは大人たち。
貧困の為に子供を売る親。幼児売春をさせる組織。欲望の為にタイに子供を買いにくる外国人。
自分の子供の病気を治すために臓器を買う金持ちの外国人(ここでは日本人梶川=佐藤浩市)。
タイにおける臓器売買、心臓手術の有無についてはどこまでが真実かフィクションなのかが判断しづらいが前者の方は事実に近いと思われる。
そして、臓器売買の真実をえぐりだし、報道しようとするバンコク駐在の日本の新聞記者・南部(江口洋介)の視線を中心に、ヒューマニズムに燃えタイにやってくるNGOの若者・音羽恵子(宮崎あおい)が違う立場で子供たちを見つめ、助けるために奔走する・・・・。
タイ国内でも命を懸けて子供を守るために働く団体があり、新聞記者の南部とNGOボランティアの恵子はそこで知り合うが南部には“意外なラスト”が待ち受けている。
しかし、なぜラストにそれまで積み上げてきたものの総てを放り出してしまうのか。彼が過去に押しつぶされるのを伝えるには、終盤の展開だけでは説明不足だったような気がして、罪を認めているなら最後まできっちり自分の仕事を成し遂げてほしかった。救えなかった子供の為にも。
ここは原作と違うラストらしいです。
タイ現地の女の子が、日本からきたNGOの恵子(宮崎)に最初に言う言葉。
「日本で出来ることがあるのに、どうしてタイに来たの?」――胸に刺さります。
臭い物、汚いもの、見た物しか知らない、知りたくない。蓋をしている場所は日本にもたくさんあるはず。世界のどこかで強いものが弱いものを虐げ、優位な国が弱い国で悪の限りを尽くす。昔も今もこの構図は変わらない。
人ひとりの欲望が積もり積もって暗い闇を作り出している。可哀相、いけないこと、などでは済まされない、どう観るか?が問われる難しい映画です。 ★★★★
組織で働くチット(プラパドン・スワンバーン)も元闇の子供、好演。妻夫木聡も出演。
監督;「亡国のイージス」「魂萌え!」の阪本順治 原作;梁石日
地震と大雨と『U・ボート』 [映画【やらわ】]
7月24日(木)00:10よりNHK BS2で「U・ボート」(1981・西ドイツ)が放送されるので久しぶりに観たいな~と予約録画してみました。
でも、なんとこの日は東北地方で震度6の大きな地震が起こってしまい、それどころではありません。
後半が地震情報となっていました。
諦めていたんですが偶然今朝(28日)の新聞で14:20から再放送になることを見つけた私。
これはNHKさんのご好意?喜んで再び録画予約。
でもこの時間あたりから降り出した大雨。・・・BSは雨が降ると映りがとんでもなく悪くなるんですよね、今度は前半がダメ。
それにしてもすごい大雨でした。その時間は私は傘をさして歩いていたんですが近くに雷が落ちて飛び上がりましたよ。
商店街の文房具屋のおばちゃんが音に驚いて出てきて、「どこに落ちた?」と聞かれたんですが近くという以外はわかんないですよね~。
お向かいの畳屋のおじちゃんも飛び出してきてました。その後、消防車や救急車がサイレンを鳴らして通り過ぎたので火事になってたかも。
神戸や金沢でも大きな被害が出てしまってます。
そして映画なんですが最初の録画で前半を観て、そこから今日の分で後半観ればいいんですけど・・・さすがに3回目はありませんよね?NHKさん。(^_^;
「U・ボート」(原題: DAS BOOT)1981年西ドイツ・・・第2次世界大戦を舞台にドイツ軍潜水艦U-96の乗組員の戦いを描く戦争ドラマの秀作。
狭い艦内での息詰まる緊張感と衝撃のラストに涙です。
制作は「スターリングラード」のギュンター・ロールバッハ。
監督は「昼と夜のような黒と白」のウォルフガング・ペーターゼン。
元Uボート潜水艦の従軍記者ロタール・ギュンター・ブッフハイムの原作を基にペーターゼン監督自らが脚色。
もともとは全6話だったTVドラマを映画に編集したもので1983年のアカデミー賞は6部門ノミネート。
Uボートの実物大レプリカを建造して撮影されたことが注目され、このレプリカUボートは後に『レイダース/失われたアーク』にも使われたとのこと。